サーキットのコース外のエスケープゾーンとは
サーキットのエスケープゾーンといえば、砂利を敷き詰めるのが一般的だった。しかし近年では部分的に舗装されるケースが増えており、特に国際規格のサーキットではその傾向が強いようだ。舗装と砂利でどんな違いがあるのか、メリットは何なのかを調べてみたい。
コース逸脱しても安全であるべきエリア
サーキットが一般道に比べて安全といわれるのは、歩行者や対向車が来ないことはモチロン、エスケープゾーンと呼ばれる待避エリアの存在も大きい。主としてコーナーのアウト側に設けられており、オーバースピードやブレーキトラブルで止まり切れなかった、または曲がり切れなかったときの『逃げ場』といえる。
そのゾーンのさらに奥にあるタイヤバリアやガードレールに車両が衝突すれば、速度や当たり方によるが大きなダメージを受ける確率が高い。そこへ到達する前にコースアウトしたクルマを減速、もしくは強制的に止めるための設備がエスケープゾーンだ。
砂利を敷き詰めていることから『サンドトラップ』とも呼ばれ、飛び込んだクルマをごく短い距離で停止させられるのがメリット。ただし深い砂利がゆえに一度そこで停止すると再発進するのは困難だし、エアロパーツやオイルパンなど下まわりを破損する可能性がある。
脱出できたとしても砂利をホイールの内側やアンダーパネルに巻き込んでおり、すぐコースには復帰せず芝生の上を走って砂利を落とす必要があったり、場合によってはピットに戻って点検と清掃をしなければならない。単なるフリー走行なら特に問題ないかもしれないが、一瞬の遅れが命取りのレースとなれば話は別。コース復帰が遅れれば遅れるほど勝利は遠ざかるし、脱出できなければリタイヤという最悪の結末になってしまう。
コースアウト即リタイアではない 立て直しできるという安堵意識へ
ところが最近のサーキットでは事情が違うようだ。エスケープゾーンが従来のような砂利から舗装に変わっており、その傾向は国際格式のレーシングコースでより顕著に見られる。理由を数多くのビッグレースを開催している、宮城県の『スポーツランドSUGO』に聞いてみた。砂利から舗装に置き換わったのはマシンの復帰を容易にすることや、砂利をコース内に撒き散らして二次災害が起きるのを防止するだけじゃなく、ドライバーの心理的および視覚的なプレッシャーを解消することも目的だという。
例えば長いストレートの直後にあるコーナーでは、曲がり切れないと感じたとき何とかコース内にとどまろうとし、後続車に危険を及ぼすスピンや結果的に止まることができず、ステアリングを大きく切って砂利に入り横転することがある。
ところが砂利の手前に舗装されたエリアがあれば、そこを使って立て直せば大丈夫という気持ちの余裕が生まれ、スポーツランドSUGOでは1コーナーと馬の背コーナーのスピンや事故が激減したとか。アクセル全開で駆け上がる最終コーナーのアウト側も、以前は減速させる効果が非常に小さい芝生だったが同様の理由で舗装に変更されている。コースから飛び出したときに挙動を大きく乱したりしないように、また舗装した部分を使ってタイムアップすることがないよう、コースや縁石との段差や角度がシッカリ考慮さているとのことだ。