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30年経ったいまなお色褪せない究極の走り! 「セナ」も高く評価したホンダ初代NSXは何がスゴイのか?

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TEXT: 藤田竜太(FUJITA Ryuta)  PHOTO: ホンダ、Auto Messe Web編集部

伝統あるスーパーカーメーカーに脅威を与えた

「様々なレベルのドライバーが数多くの道路環境下で快適に、ピュアに高性能が引き出せ、ドライビングの楽しさを味わえるスポーツカー」がNSXのコンセプトだったため、ニュルにおいても限界性能、限界特性だけではなく、クルマに対する信頼感や安心感の向上も優先させた。
市販モデルのNSXがツインリンクもてぎの南コースを走行

 ハンドリングでいえば、ステアリングを切ったときに、切り始めからレスポンスよく反応するが、決して過敏ではなく、じわっとどこまでも切り足していけるような上質な粘りで、「腰」があるのがNSXの特徴だ。これは従来のスポーツカー、とくに欧州のミッドシップスポーツとは一線を画す、操縦性と安定性の最適な両立化がなされているとして、フェラーリなど伝統あるスーパーカーメーカーに相当な脅威を与えた。
市販モデルのNSXがツインリンクもてぎの南コースを走行

 サスペンション形式は前後ともインホイールタイプのダブルウィッシュボーン。フロントにはコンプライアンス・ピポットを採用し、ブッシュを固めずにトー変化を抑制。乗り心地を犠牲にせずに、接地性変化を最小限にし、高い操縦安定性を確保している。またキャスターも8度と多めで、ハイスピードレンジでの直進安定性に優れている。
ホンダNSXの足回りの透視図

 この点もライバルとされたフェラーリ348などに比べると、NSXの方が圧倒的に優れていた。こうした優れたハンドリングを、電子制御に頼らず作り上げた点は、今でも高く評価できる。
ホンダNSXのライバルだったフェラーリ348

 また戦闘機のF16をモチーフにしたキャノピーキャビンは全方位視界で、運転席からの水平方向の視界は311.8度もある。マフラーもスポーツカーらしさと快適性を求め、100本以上試作し、理想のサウンドを探ったとされる。

 ボディの空力にも優れていたため、同じ280馬力の日産スカイラインGT-R(R32)やフェアレディZ(Z32)よりも最高速は伸び、NSXは約270km/hをマーク。Z32よりも10km/h、R32GT-Rより15km/hほど速かった。開発車両に試乗しアドバイスも行ったアイルトン・セナや中嶋悟もハンドリングやエンジンの吹き上がり、スタビリティを高く評価したのは有名な話だ。

ホンダ自らオーナー向けのドライビングレッスンも開催

 またオーナーズミーティングを開催し、NSXオーナーのドライビングスキルを磨くための環境を、メーカーであるホンダが用意しているというのもトピックだった。NSXでスポーツ走行をしてみると、ステアリング操作に対して、実に忠実で癖がなく、ミッドシップカー特有のナーバスさがほとんどない。鈴鹿サーキットで行われたNSX Festa

 少し調子に乗って、テールが流れるまで攻めたとしても、カウンターできれいに収まるので安心感が高い。デフがLSDではなくオープンデフなので、ヘアピンなどでインリフト気味になると、内輪が空転することもあったが、TCS(トラクションコントロールシステム)的な役割を担っていたともいえるし、サスペンションストロークは消して短くはないので、乗り方で工夫できる部分でもあった。
濡れた路面で定常円旋回を行うNSX

 物足りない部分としては、ブレーキがポルシェやフェラーリに比べるとプアーだったことと、スタイリングにエキセントリックさが欠け、ちょっとおとなしすぎたことぐらいだ。今でも人気が高く、中古車の平均価格も650~700万円ぐらいと高値が続く。初期型の新車価格は800万円だったが、いま考えると、ずいぶん破格なバーゲンプライスだったかもしれない。

 いずれにせよ、自動車史に残る不朽の名車の一台だ。

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  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • モータリング ライター。現在の愛車:日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)。物心が付いたときからクルマ好き。小・中学生時代はラジコンに夢中になり、大学3年生から自動車専門誌の編集部に出入りして、そのまま編集部に就職。20代半ばで、編集部を“卒業”し、モータリング ライターとして独立。90年代は積極的にレースに参戦し、入賞経験多数。特技は、少林寺拳法。
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