番外編 バタフライウイングが特徴的な「セラ」
パイクカーの定義を「突出した存在のクルマ」とするならば、トヨタにはwillシリーズの前にパイクカーと呼べるモデルが存在した。1990年に発売された「セラ」である。P70系スターレットをベースとするこのモデルは、ウエストラインから上をほぼガラスで占めたこと(グラスキャビン、グラストップ)がデザイン上の特徴となる車両で、ドアは斜め上方に跳ね上げるタイプのバタフライ式で作られていた。
既存の乗用車形態からは大きく外れる路線のモデルで先進的な印象が強く、クルマの雰囲気を満喫しながら走を楽しむ車両性格が強かった。エンジンは1496ccの5E-FHE型110psで、ミッションは5速MTと4速ATが用意されたが、購入されたのは4速ATがそのほとんどだった。完全オリジナルの外内装、ガラスを多用したデザインを考えれば相当高額な価格になっても不思議はない車両だったが、ベースグレード車で160万円(初期モデル)の価格設定はトヨタの大盤振る舞いとも言える廉価設定だった。
自動車は大型耐久消費財とも言われるように資産価値が高い商品であり、購入にあたってはどうしても保守的な意識が働きがちとなる。そのためパイクカーは、おもしろい、いいな、とは思っても、実際の購入に際しては踏み切れないケースが多かったようだ。