健常者も障がい者も一緒に楽しめるサーキットイベント
9月2日(水)、今年初めてとなるHDRS(ハンド・ドライブ・レーシング・スクール)が千葉県・袖ケ浦フォレストレースウェイで開催された。このHDRSは、レース活動以外にもさまざまな活動を展開している青木拓磨選手が立ち上げたスクールで、健常者・障がい者が分け隔てなくサーキット走行を楽しもうという趣旨のもと開催されている。
青木拓磨選手は、2輪ロードレース世界選手権(WGP)に参戦を開始した翌年の1998年シーズン直前にGPマシンのテスト中の事故によって脊髄を損傷。下半身不随となり、それ以後レース・フィールドを4輪に移し、積極的にレース活動を行っている。 今でこそ国際B級ライセンスを取得して、4輪レースのさまざまなフィールドで活躍している青木選手だが、4輪への転向を決めた当初は“4輪のレースライセンスの申請却下が続いていた”という。やはり「歩行ができない=事故を起こした際に車両から脱出できない」という思い込みからレースを運営する健常者と、レースをしたい障がい者との違いにあるという。 その考えの溝をどのようにしたら埋めていけるか? ということで自身が積極的なレース活動を展開することとともに「車イスだから排除する」「障がいがあるからレースをあきらめる」をなくす活動のひとつとして、HDRSの企画が立ち上がっている。 HDRSは、その名の通りレーシングスクールではあるが、レース参戦だけを目標にしているのではない。障がい者の方々が普段使用している車両を持ち込んで走行もしている。自身が一般公道で使用している運転補助システムを移植することなく、自身のクルマの性能をもっと引き出してドライブすることを堪能できるのだ。サーキット走行という経験を通して、車両のさらなる性能を確認したり、乗車姿勢の確認をしてみたりと、一般公道走行にも有効な技術の習得にもつながる。 もちろん、HDRS専用の車両として、K12型日産マーチカップ(3代目マーチによるワンメイクレース)カーに運転補助装置を装着した車両(MT車)、ホンダN-ONEカップカーも用意されている。イタリアのグイドシンプレックス社の手動装置が装着されたこれらの車両を実際に運転することも可能だ。 今回、初めて参加した藤尾さんは「SNSを通じてこのスクールのことを知ってエントリーをしました。車いす生活10年ですが、クルマを運転したいと思って、つい最近、この車両を購入しました。免許は持っていましたが、教習所に行って運転の確認をしたり、手動装置もしっかり調整をしたりして、今回参加しました。サーキットは初めての走行ですごく疲れてしまいましたが、すごくうれしかったですし、はまりそうです」とこの日の走行を振り返ってコメントしてくれた。 HDRSでは、自ら運転するだけでなく、同乗走行だけを希望する参加者も受け入れてもいる。スクールに協力をしている袖ケ浦フォレストレースウェイでは、なんと障がい者は3000円(健常者は2万円)という破格のプライスも実現している。