アイデアに満ちた商品展開でムーブメントを巻き起こす
フロンテで軽自動車メーカーとしてのポジションを確立したスズキですが、その後も様々な意味で大きなエポックとなる商品をリリースして来ました。ここでは3件ほどを取り上げて紹介しておきましょう。
先ずは1979年に5代目フロンテ(SS30/40系)の姉妹車として登場した初代アルト。徹底的にコストを切り詰めて47万円の廉価な販売価格を実現したことにも驚かされますが、何よりも注目されたのは商用車となる4ナンバー車両と位置付けられていたこと。商用車なら税制の面で有利であることは、知識としては多くが知っていたにもかかわらず、それを逆手にとってセカンドカー市場を開拓したことです。そしてこのヒットにより軽のボンバン(ボンネット・バン)市場が確立されたのです。
背を高くして室内の居住スペースを確保する。これは現在の大きなトレンドとなっている軽ハイトワゴン/スーパーハイトワゴンに繋がるもので30年近くの大きな流れを創ったことは歴史的に見ても大きなエポックです。
もっともこの考えは、それより約20年も前にホンダがライフ・ステップバンでトライしていました。ただし時代が早すぎたのか、それとも全長3m×全幅1.3mと、ワゴンRの時代に比べてふた回りも厳しかったサイズ制限のせいなのかは不明ですが苦戦。一方ワゴンRは間違いなく大ヒット商品となり、その後各メーカーから後追いで同様なモデルが発表され、現在に続いています。
最後に2輪車のケースも紹介しておきましょう。それは73年に発表されたロードスポーツのRE-5です。RE-5というネーミングからも分かるようにロータリーエンジン(RE)を搭載したもので、当時はホンダやヤマハ、あるいはカワサキなど他メーカーも研究開発を行っていましたが、実際に発売されたのは、スズキのRE-5のみでした。また国産モデルとしてだけでなく海外を見渡しても販売までこぎつけたのは片手で足りるほどで“激レア”なモデルであることは間違いありません。
ところでRE-5がリリースされた当時、スズキでは4輪車のエンブレムも、おむすび型のようなREを連想させるデザインが使用されていました。果たして、4輪車への展開も考えていたのでしょうか。スズキの企業博物館である『スズキ歴史館』で訊ねてみましたが、はっきりとしたことは分からないとのことでした。果たして…!?