ここまで規則を厳しくせざるを得なくなったワケとは?
爆音マフラーは近隣の人たちに迷惑がかかるから、騒音規制が厳しくなったことは割と理解できるのではないだろうか? だがその一方「シートは音も出ないし誰にも迷惑をかけないのでは?」と考えて当然と言えば当然である。
しかし、ドライバーや搭乗者の『命』に大きく関わってくるのはむしろ、シートのほう。そういう風に考えれば納得も行くもの。クルマ同士の衝突や、壁に激突した際には何トンもの相当なGがかかる。その力によって、シートそのものが破損すればいくらシートベルトをしていても意味がないし、シートレールからシートが外れ、フロントガラスを破って社外にシートとドライバーごと投げ出されることもありえる。
粗悪なコピー品を知らずのうちにつけてしまって、そんな不幸に巻き込まれるなんて、超論外である。車検に通る“ポイントその1”で触れたとおり、シートとシートレールはセットで保安基準試験をクリアしている。なので、クルマを乗り換えたり、中古品を買うときは特に注意が必要で、シートは有名メーカーの正規品でも、シートレールが正規品でなければ、原則的に車検はNGになるのだ。
もちろん、その新たな組み合わせで試験に合格すればOKということも言える。だが、ユーザーレベルではそこに大金を使うぐらいなら、車検に適合する新品を買ったほうが断然安いし現実的。試験にクリアするのはメーカーでも相当な労力や時間、さらには資金が必要のようだ。
ちなみに、『フォルシア』ということばを聞いたことがあるだろうか? ブリッドは100%、おそらくレカロでもそうだろうが、保安基準試験に合格しているシートレールに採用されているシートスライダーは、フランスの『フォルシア社』から購入している。
シート位置を前後にあれだけスムーズに調整できるのに、衝突時に「トン」レベルのGが加わっても、簡単に外れることはないのだ。「フォルシア製のスライダーは日本人でも真似できないパテント(特許)のかたまりなんですよ」とブリッドのスタッフが解説してくれたのが、いまでも強烈な印象として残っている。