この記事をまとめると
■平成29年から保安基準適合を証明する書類が必要
■バケットシートは背面カバーと後席からすぐ降りれることが条件
■サーキットで効果的な4点式シートベルトは車検NG
社外のバケットシートに交換する際に知っておきたい「車検に対する」基礎知識
知れば知るほど、じつは意外と難しいシート交換。サーキット専用車両なら、車検のことなど考えずに性能重視で選べばいいが、一般道を走る場合、シート交換についてはいろいろと注意事項がある。ここではシートとシートレールのハナシをメインに、社外のバケットシートに交換する際に知っておきたい基礎的な知識をまとめてみた。
平成29年からは車検時に「書面確認」が必要に!!
平成29年7月、道路運送車両法施行規則の一部改正がおこなわれ、いままで車検に対してグレーだったパーツも「保安基準適合を証明する書類」で確認できなければ不合格になるなど、白&黒ハッキリと判断されるようになった。
今回のテーマとなる、社外のバケットシートやシートレールもそれの対象となっているのだが、スポーツシートを扱う各メーカーからもしっかりとアナウンスされているので、なんとなくでもご存知の方は多いだろう。
すでにバケットシートに交換していても、いままで何度も同じ状態で車検に通ってきたが、ここ数年内で突然「不合格になった」というケースは、『保安基準適合を証明する書類』が確認できなかったという理由が考えられる。では車検に通るバケットシート&シートレールとは、どういう条件がそろっていないといけないのか?
車検に通るバケットシートとは
社外シートに交換するのって、「なんだか厄介だし面倒だ」とお嘆きの気持ちはよく理解できる。そんなアナタのために、車検に通るバケットシートの3つのポイントを簡潔にまとめて行こう。
ポイントその1:保安基準適合を証明する書類で確認できること
上記でも述べたとおり、最重要なポイントになるのが、車検対応品であることが、保安基準適合を証明する書類で確認できること。適合を証明する書類には、シートとシートレールの組み合わせで適合試験に合格しているので、その正規の組み合わせ以外では車検は不合格になる。
ポイントその2:背面がむき出しの場合は保護されていること
一般的に交換式のフルバケットシートなどの背面が、シェル素材(カーボン、アラミド、FRPなど)がむき出しになっている場合、後部座席のあるクルマであれば、シートバックプロテクターと呼ばれるオプションパーツなどを装着して、後部座席の乗員保護が施されている必要がある(一部例外はあるようだが)。もちろん、オープンスポーツカーなどの2シーター車両であれば、プロテクターなどで保護する必要はなし。
ポイントその3:後部座席からすぐに降りられること
4ドア車のように後部座席の乗り降りが便利で簡単にできるクルマはいいが、2ドア車(3ドア車)の場合であれば後部座席の乗り降りがスムーズにできるように、運転席か助手席のいずれかがリクライニングシートになっていなければならない。2ドア車で後部座席があり乗車定員が5名(軽自動車なら4名)のクルマは、運転席&助手席の両方がリクライニングしないフルバケットシートの場合は車検NGとなる。
ここまで規則を厳しくせざるを得なくなったワケとは?
爆音マフラーは近隣の人たちに迷惑がかかるから、騒音規制が厳しくなったことは割と理解できるのではないだろうか? だがその一方「シートは音も出ないし誰にも迷惑をかけないのでは?」と考えて当然と言えば当然である。
しかし、ドライバーや搭乗者の『命』に大きく関わってくるのはむしろ、シートのほう。そういう風に考えれば納得も行くもの。クルマ同士の衝突や、壁に激突した際には何トンもの相当なGがかかる。その力によって、シートそのものが破損すればいくらシートベルトをしていても意味がないし、シートレールからシートが外れ、フロントガラスを破って社外にシートとドライバーごと投げ出されることもありえる。
粗悪なコピー品を知らずのうちにつけてしまって、そんな不幸に巻き込まれるなんて、超論外である。車検に通る“ポイントその1”で触れたとおり、シートとシートレールはセットで保安基準試験をクリアしている。なので、クルマを乗り換えたり、中古品を買うときは特に注意が必要で、シートは有名メーカーの正規品でも、シートレールが正規品でなければ、原則的に車検はNGになるのだ。
ちなみに、『フォルシア』ということばを聞いたことがあるだろうか? ブリッドは100%、おそらくレカロでもそうだろうが、保安基準試験に合格しているシートレールに採用されているシートスライダーは、フランスの『フォルシア社』から購入している。
シート位置を前後にあれだけスムーズに調整できるのに、衝突時に「トン」レベルのGが加わっても、簡単に外れることはないのだ。「フォルシア製のスライダーは日本人でも真似できないパテント(特許)のかたまりなんですよ」とブリッドのスタッフが解説してくれたのが、いまでも強烈な印象として残っている。
シートベルトはどうなの?
シートに関連して、シートベルトはどうだろうか? モータースポーツでは装着が義務化されているほどメジャーな4点式シートベルト。シッカリとシートにカラダが固定され、サーキットでのスポーツドライビングではなくてはならないアイテム。
それらの役割を考えると、純正の3点シートベルトよりも優れているようにも思えるが、じつは、4点式シートベルトは車検NG。一般道での4点式シートベルトは、保安基準を満たしていないためNGとされている。サーキットでは4点、一般道では純正の3点式を使い分けるのがいい。
保安基準では、シートベルトには自動巻き取り装置が必要で、サーキットとは逆に「上半身なりを簡単に動かせるようにせよ」と定められているのだ。ある程度の自由度がないと、バックするときに後方確認するのも大変というワケだ。
そういう意味では、カラーシートベルトも同様と言えるだろう。ドレスアップアイテムとしてもカラフルなカラーシートベルトは車内の華やかさが一気に増すので人気が高い。車検に関しては、強度や難燃性が確保され、自動巻き取り装置が問題なく作動することが前提だが、専門機関による品質試験をクリアしているものであればOKのようだ。