日本のパトカーといえば「白黒パンダ」
日本のパトロールカー(パトカー)といえば、覆面パトカー以外では白と黒のカラーリングに塗られており、その色合いから、「パンダ」と呼ばれることもある。1955年にこの塗り分けになって以来65年間が経過しているため、パトカーに充てがわれた車種も数え切れないほど多い。そこで今回は、白黒パトカーになったクルマたちから、定番と「こんなクルマまで!?」という車種を集めてみた。
1)白黒パトカーの超定番「トヨタ クラウン」
日本各地で見かけるパトカーの定番は、やはり「トヨタ クラウン」だろう。パトカーの選定は競争入札で行われるが、入札できる車種には4ドアセダンであること、定員5名であること、排気量(警ら車は2.5リッター以上、交通取締用だと3リッター以上)などの条件があり、クラウンはその多くを満たしているためだ。
さらにクラウンには「パトカー専用グレード」が用意されていることも大きい。回転灯や無線などのコストがかかる専用装備を持ってもなお、市販されているクラウンよりも安価なのは、専用グレードを持っている強みといえよう。
クラウンがパトカーに採用された歴史は古く、1955年登場の初代クラウン(RS型)からすでに白黒カラーをまとっていた。しかも、厳密にはクラウンではなく「トヨタ パトロール(FS型)」で、性能をアップするために、1.5リッター/1.9リッター直4エンジンから、直6エンジンに載せ替えてあり、長くなったエンジンを収めるため、全長も伸びていた。
2)かつてはパトカーの花形だった「日産 スカイライン」
日本を代表するスポーティサルーン「日産 スカイライン」も、パトカーに採用されたことが多い車種だ。現行型のV37型では白黒パトカーのスカイラインを見ることはできないが、かつては4代目・C110型(ケンメリ)から8代目・R32型までパトカー専用グレードを作っていた。写真は5代目・C210型(ジャパン)のパトカー。メーカー広報写真のため「警視庁」「○○警察」などの文字が入っていない。
歴代スカイラインGT-Rや、R35型GT-Rもパトカーになったことがあり、R32型はいくつかの都道府県で、R33型(しかも4ドアのオーテック)は神奈川県警が、R34型では埼玉県警で使われていた。そして最新のR35型も、栃木県警に「ニスモ」が納入されている。
パトカーの調達には国費で一括購入のほか、都道府県ごと、寄贈などいろいろな方法があるが、R32型は国費で一括、R33・34型は都道府県費、R35型は個人+日産からの寄贈により導入されている。実際の取り締まりに使用する以外にも、「インパクト」を生かしてPR活動などにも活用されることが多い。
ちなみに「ホンダ NSX」(初代・NA2型)も、栃木県の高根沢工場で製造されていたことが縁で、ホンダが栃木県警に寄贈したという経緯を持つ。
3)様々な車種があり地方色豊かなミニパト
駐車違反の取り締まりなどに用いられる「ミニパト」。ミニパトといえば軽自動車の印象があるが、1500cc以下だとこちらに分類される。「トヨタ パッソ」「スズキ ソリオ」などが国費で一括調達されたほか、都道府県ごとに導入する場合があるため、車種が多いのが特徴だ。
パトカー専用グレードではないので、市販の状態を保っている。写真は、宮城県警の「スズキ SX4 セダン」。同車のパトカーはいくつかの県で見ることができるのみなので、地方色あふれるパトカーといえる。
4)国産名スポーツカー「初代シルビア」もパトカーで活躍
1960年代に入ると、クルマの高性能化が進み、高規格・高速道路の開業が相次いだことから、パトカーの性能をアップする必要が出てきた。そこで、スポーツカー・スポーティカーをパトカーに採用するようになった。
写真は、第三京浜のパトロール用として1965年に神奈川県警が導入したハイウェイ・パトロール用の「日産 シルビア」(CSP311型)。黒い面積が多い塗り分けが特徴的だ。このほか同時代の名スポーツカー「マツダ コスモスポーツ」も、警視庁や広島県県警に配属され、白黒パトカーとして活躍していた。
5)ポルシェもパトカーに採用されたことがあった
パトカーといえば国産車の採用が基本だが、かつては輸入車のポルシェや「フォード マスタング」なども使われたことがあった。写真は、1967年から京都府警・愛知県警など4府県に、合計4台が寄贈によって配属された「ポルシェ912」のパトカー。
1.6リッター水平4気筒エンジンは、911の2リッター6気筒に比べるとパワーは少なかったものの、それでも120馬力の最高出力と185km/hの最高速度は、当時の日本では十分以上の性能を持ち、東名高速、名神高速で違反車の取り締まりに活躍した。
パトカーの調達にはいろいろな事情があるため、「あんな車種がパトカーになったらいいな」と望んでもなかなか叶わないことも多いが、今後も興味深いパトカーの登場を期待して待ちたい。くれぐれも、それに捕まったりはしないように注意しよう!