電気自動車の廃バッテリーを電動車いすに
車いすで乗れる福祉車両の開発には目が行き届いてきたが、乗った人の安全は忘れられていた側面がある。つまりシートベルトの重要性や、追突事故に対応するヘッドレストの有無だ。あるいは車いすでの乗降だけに目が行きがちで、電動であったり、スロープの角度であったりについて自動車の設計者が腕を振るったが、車いすに乗った人の乗車後については、なかなか目が行き届いていなかった。
一方、クルマ用の車いすはウェルチェアでは車輪が小さく、オーテックのLV車いすは幅が狭い。それらが、日常生活における車いすの利便性に影響を与えないのか。場合によっては、日常生活と、クルマでの移動で車いすを使い分ける必要があるかもしれない。
これから進むクルマの電動化に際して、電動の車いすも自動車メーカーでつくれないだろうか。そこにEV(Electric Vehicle=電気自動車)廃車後のリチウムイオンバッテリーを搭載するのである。現在の電動車いすは鉛酸バッテリーが使われているが、リチウムイオンバッテリーであれば小型軽量で、なおかつ容量があるので遠出をしても安心ではないか。一方、リチウムイオンバッテリーは高価なのだが、EV廃車後の再利用であれば原価を下げられる。
つまりクルマの電動化と福祉は一体であり、それによってEV開発と車いすの連携が進むことにより、万人が移動の喜びを味わえる機会が広がるはずだ。EVを主体としたクルマの電動化は、単にエンジン車の代替でなく、クルマの技術がより広く社会に貢献できる夢の時代の開拓なのである。