思わず「ニヤリ」とする楽しさを追求
マーチなのに330万円! それでも、このモデルが当時なぜ即完売するほど注目されたのか? それを紐解くために、まずはざっとプロフィールを紹介しよう。
開発コンセプトは「見てニッコリ、走ってニヤリの笑顔製造機。」このモデルが目指したのは、レースなどで求められる「絶対性能」ではないことを表したフレーズだ。
あくまで、求めたのは“ストリート”での高次元な走り。高速道路など長距離クルージングでも疲れない快適性や、ワインディングでの爽快なハンドリング、普段の街乗りで交差点を曲がるだけでも「ニヤリ」としてしまうほどの扱いやすさなど、幅広いフィールドで操る楽しさを提供することを目的に開発されたのだ。
またデザインも、やはり同社が製作を担当するドレスアップ仕様の「マーチ ボレロ」をベースに、丸味を帯びナチュラルな印象のワイドフェンダーを採用。これにより、ボレロがもつ「エレガントでキュート」なイメージに、強烈な「ダイナミックさ」が加味されている。
そして、これらカスタムにより、クルマが好きな人が、運転するときだけでなく、愛車を眺めたときでさえ、つい「ニッコリ」としてしまう仕様……それがこのモデルのコンセプトなのだ。
熟練の職人がエンジンを手組み
ストリート仕様とは言いつつも、開発には古くから日産のグループCカーやGTカーなど、レース用マシンのエンジン開発にも携わってきた同社の技術が惜しみなく投入されている。
ノーマルのマーチがHR12DE型エンジン(1.2L・水冷直列3気筒)を搭載するのに対し、ボレロA30ではHR16DE型(1.6L水冷直列4気筒)を採用。K13型マーチに搭載できる最大排気量だ。
このエンジンをベースに、専用のクランクシャフトやカムシャフト、高強度のコンロッドなどを装備。しかも前述の通り、レース用エンジンのノウハウを持つ熟練の職人により、インテークポートの研磨やハンドビルド(手組み)なども施すという、市販車ではありえない手間のかけようだ。
そして、これらチューニングを施すことで、最高出力150ps/7000rpm、最大トルク16.3kgf・m/4800rpmを発揮。パワーだけでなく、十分な中低速トルクを確保しつつも、レブリミットの7100回転まで気持ち良く吹け上がる特性を実現することで、誰にでも扱える必要十分な動力性能を実現している。
ちなみに、ミッションは5速MTのみの設定で、シフトレバーの取り付け剛性を高めるなどの専用チューンが施されてる。