安全なレース展開へ 重要なメッセージの旗信号
レースの終了時、コントロールライン上のポストで、オフィシャルが派手に振る「チェッカーフラッグ」。たびたびレースを題材にした映画などで描かれているだけに、このホワイト×ブラックのチェック柄の旗がレースやセッションの終了を意味することをご存じの方も多いに違いない。
しかし、レース競技ではそれ以外にもいろんな種類のフラッグが用意され、各フラッグで意味を伝えていることはご存知だろうか? かつては、恐るべき速さのなかで「命を賭けた勝負の世界」と言っても言い過ぎではなかったモータースポーツでの、重要なフラッグ信号の意味をお伝えしよう。
サーキットのコース状態を伝える各種フラッグ
サーキットを舞台に争われているレース競技は、EV以外はエキゾーストに包まれているため、コースサイドに位置するオフィシャルは、各マシンのステアリングを握るドライバーに対して音声によるアナウンスではなく、フラッグを提示して注意事項を伝えている。そのフラッグの種類は実に多彩で、それぞれに異なる意味を持っており、ドライバーはその指示に合わせた対応を実施している。
まず、レースシーンでよく見かけるのが「イエローフラッグ」だ。
これは競技車両が接触してコース上に止まったり、グラベルにはまって動けなくなった際に振られるサインで、後続車に対して危険を告知するもの。イエローフラッグが提示された場合、ドライバーは速度を落とすとともに、イエローフラッグの区間の終わりを告げる「グリーンフラッグ」が提示されるまでの区間では追い越し禁止となる。2次トラブルを回避させるための注意勧告のフラッグだ。
ちなみに、グリーンフラッグはイエロー区間の解除を知らせレース再開を知らせるだけでなく、フリー走行や予選のセッションではそれぞれの開始の意味を持つ。通常通り走ってOKと言うサインだ。
一方、「レッドフラッグ」もレースシーンで目にする機会が多いが、こちらはレースの中断を意味するフラッグで、大雨や霧などの天候の急変、あるいはコース上にマシンが停止して後続の進路を塞ぐなど、これ以上はもう全然競技ができないと判断された場合に提示される。
勝負展開を勧告するフラッグも
また「ブルーフラッグ」もレースシーンではよく見かけるフラッグのひとつだ。後方から速度の速い車両が追い越しをしようとしている状況を見極めた際に、追い越されつつある車両に対して提示される。決勝のレースでは周回遅れにされようとしている車両に対して提示されることから、長時間の耐久レースではブルーフラッグが提示される頻度が高い。
ルール上、ブルーフラッグが提示された場合、後続の車両を先行させなければならないことから、まさにブルーフラッグの提示は、当該ドライバーにとっては悔しい瞬間だと言えるだろう。
一方、速度の速いクルマが後方に迫っていることを知らせるブルーフラッグに対して、前方に低速で走行している車両がいることを告知しているのが「ホワイトフラッグ」で、アクシデントの際、救急車や車両回収車などの作業車がコース上にいる際、危険を告知するために提示される。
また、危険を知らせるという意味では赤と黄色のストライプ柄を持つ「オイルフラッグ」もアクシデントの際によく見かけるサインだ。
このオイルラッグ、日本での正式名称は「赤の縦縞のある黄旗」で、コース上にオイルが漏れて、滑りやすくなっていることをドライバーに告知する場合に使用されているが、オイルのほか、砂利、マシンの破片などの落下物がコース上にある場合もこのオイルフラッグが提示されることから、コース上にいるドライバーは注意が必要となる。