1)サビ具合の追求にハマッたプラモ制作処女作の720系ダットラ
ここからはPAPANさんの作例を紹介していこう。まずは今もアメリカンカスタム業界でファンが多い720系ダットサントラック(通称ダットラ)。PAPANさんも若かりし頃に乗っていたという、思い入れのある1台を、放置車両プラモのデビュー作に選んだ。この時はまだサビやヤレ具合をどのように再現したら良いのか何も分からず、ネットで情報を集めながら作ったという。しかしこのダットラが、これまで作った作品の中で最も出来映えが良くて気に入っているとのこと。
ボディのサビはボンネットやフェンダー、サイドシルなど多岐に渡っているが、実際にPAPANさんが乗っていたダットラも同じ箇所がヤレていたという(さすがにここまでサビてはいなかったが)。実車に乗っていたからこそ、よりリアリティのある仕上がりを実現した。またサビを再現するための塗料は何色も使い分け、サビの浸食具合で異なる微妙な色の違いを再現。リアルな質感を再現できたことで、2作目以降の製作のやる気へと繋がったそうだ。
ボディに関しては前述の通りカッターで面を削って、意図的に段差を付けている。しかしバンパーやドアミラーといったメッキパーツは、そのまま上からサビ風の塗装を施すだけで鉄メッキのサビを表現できるからラクだったとか。
昭和40~50年代に多かったホーロー看板も良いアクセントとなっているが、こちらはネットで見つけた画像をプリントして厚めの銀紙に貼り、サビ塗装を施すことでヤレたダットラの雰囲気に馴染ませている。
2)タイヤのパンクと車両の傾き具合に注目のA30系セリカLB
当時アメリカの最先端であった流線的なスタイリングを採用し、1973年にデビューした初代セリカLB(A30系)。ダットラの製作で自信を付けたPAPANさんは、次の作品のベースにこのセリカLBをチョイス。ダットラよりも年式が古いことを考え、サビの浸食度は一気にエスカレート。ボンネットのめくれがより大胆となり、腐食の度合いを左右で変えてみるなど、頭の中で描いたセリカの放置車両を忠実に再現している。他のクルマから移植した(という想定の)微妙に色が違う右側のフロントフェンダー、サビに覆われた天井の上にポツンと置かれたタイヤなど、セリカがここまで熟成するまでの過去を連想させる心憎い演出も注目。
特に見て欲しいのが、右側のパンクしたタイヤ。これはタイヤのトレッド面をカッターでえぐって外側に向けて広げた後、地面に密着するようにプラ板を下側に貼ってフラットにすることで、時の流れで空気が抜けてつぶれたタイヤを再現している。しかもこれだけでは終わらず、右側のサスペンション(このモデルは金属製のスプリングを使用)をギュッとつぶした上で、前後のタイヤを接着剤でフェンダーの裏側に固定。車高を右下がりにすることでパンクによる車体の傾きを表現でき、よりリアリティが増した作品となった。
3)ボンネットとリアゲートを開閉加工したGB122系サニトラは、営業車の「成れの果て」!?
実際にはこういうツートンカラーではないそうだが、某蚊取り線香メーカーの営業車をイメージして作ったというサニートラックロング(GB122系)。営業車の入れ替えでお役ご免となり、ボディ全体がサビや汚れで覆われて廃車置き場で佇んでいる……と、見る人の想像をかき立てる仕上がりとなっている。
キモとなる汚し具合はウェザリングとサビ風の塗料で再現しているのだが、こちらのサニトラはワイパーのまわりに堆積したコケがポイント。このコケは鉄道模型の情景再現に使われる色付きのパウダーを使用。それを良い塩梅で振りかけて、年月の経過をイメージ。
そしてこのサニトラから汚し塗装だけでなく、難易度が高いボディ加工にも挑戦。本来のモデルでは開閉しないボンネットとリアゲートを、カッターを使って開くようにアレンジしている。放置車両の中にはボンネットやドアなどが開きっぱなしの個体もあり、リアルさを高めるための策として取り入れた。荷台に山積みになっているのは、クラフトペーパーで作った段ボール箱。程良い厚みがあるクラフトペーパーの方が、より段ボールらしくなるとのこと。それをつぶして曲げて、さらに大胆に汚すことでサニトラのヤレ具合に違和感なくマッチ。きっと中の蚊取り線香は、とうの昔に湿気って使えないだろう(妄想)。
今は放置車両の作り方をネット上で公開している人も多い。PAPANさんの作品も参考にしながら、理想的な1台を作ってみるのも面白い。