高精度エンジンは自動車メーカーの少ロットマシンにも
この間、F1用エンジンの開発も精力的に行われていたが、その後意外にも日本メーカーとの関わりを持つことにもなった。2010年、スバルUKが自社企画としてインプレッサWRX STi CS400 Cosworthを発表。3代目となるGRB型インプレッサをベースに、コスワースは2.5リッターのEJ25型ターボエンジンを開発。400psを発生するプレミアムモデルで生産台数はわずかに75台の希少モデル。ロードカーとしてはインプレッサ史上最強となるモデルで、コスワースによってすべてが見直された高性能エンジンだった。
さらに2014年、コスワースはスバルBRZ用チューニングプログラムとして「FA20パワーパッケージ」を発表。当初はBRZのみの予定だったようだが、車両の基本が同じトヨタ86にも対応することを明示。ライトチューンとなるステージ1の230ps仕様と過給機(スーパーチャージャー)を装着するステージ2の仕様が発表され、最もパワフルな状態では380psに達するというパワーパックキットとして販売が計画された。現時点でこのキットがどうなっているかは不明だが、チューニングキットというこれまでのコスワース社には見られない、新たなビジネスモデルに踏み出した一例だ。
また、2016年にリリースされた2代目ホンダNSXのJNC型3.5リッターツインターボエンジン(507ps)の開発、生産もコスワースが受け持っている。
エンジン技術に関しては世界トップレベルと見られるホンダだが、少量生産性、高精度な生産技術が必要なNSXの特徴を考慮して、コスワースにエンジン関係を受け持たせたということである。
お家芸のエンジン事業に加え、2006年には他社の求めに応じるエンジニアリングコンサルタント業、高性能エレクトロニクスの開発、コンポーネント製造業と業務分野を広げているが、その立ち位置は、自動車開発に関わる最先端企業として創業時から変わらぬ名門である。