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なんと「R360」から始まっていた! マツダの「福祉車両」への思いと歴史が熱すぎる

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TEXT: 御堀直嗣(Mihori Naotsugu)  PHOTO: マツダ、Auto Messe Web編集部

マツダ初の軽乗用車から設定がなされていた

 マツダは、2002年に誕生した初代アテンザの市場導入に際して「Zoom-Zoom」という企業メッセージを掲げた。Zoom-Zoomとは、クルマが走る様子を日本の子供が「ブーブー」というのと同じように、英語での子供言葉の一つである。クルマに乗る楽しさを大人になっても忘れないように、との願いを込めた企業メッセージだ。

 のちにマツダは環境保護を視野に入れる時代となっても、Zoom-Zoomはマツダ車を象徴する精神であるとして「サスティナブルZoom-Zoom」といい改め、今日に至る。

 そうした「喜びを誰もが享受できるように」との想いが昭和36年(1961年)から続いていることを、身体障害者用R360クーペ発売にみることができる。

福祉車両開発のきっかけはオートマチック仕様

 1960年5月に発売されたマツダ(当時の社名は東洋工業)の軽自動車R360クーペは、先に発売されたスズキのスズライトやSUBARU(当時は、富士重工業)のスバル360と比べ、クーペの姿をしたスポーティな軽として異色だった。技術面も独特で、RR(リアエンジン・リアドライブ)で客室後ろに搭載される排気量360ccのガソリンエンジンは、空冷のV型2気筒である。1960年に登場したマツダR360クーペ

 しかも他社が2ストロークエンジンであったのに対し、4ストロークエンジンを選択していた。また変速機は、4速手動(マニュアル)のほかに、トルクコンバーター式の2速自動(オートマチック)も選べ、これが福祉車両開発につながった。16馬力を発揮する水冷V型2気筒4ストロークエンジン

 障害者用R360クーペといっても、専用の車種を開発したわけではない。販売店で後から取り付けられる装置を開発したのである。

 当時の写真を見ると、シフトレバーの脇にもう一つレバーがあり、これを後ろへ引くと加速、前へ押すと減速の操作ができる。このレバーは加速中のレバー位置の任意のところで保持できるため、一定速度で巡行する際に疲れにくく、坂道発進も容易であるという。マツダR360クーペに設定された手動運転装置で速度を調節するレバー

 そしてハンドルには、片手で回せるようなグリップが取り付けられている。ほかに、ハンドルのグリップを握った手でウィンカーレバーを操作できるように、ウィンカーのレバーが長くなっている。ホーンもレバー式となっていて、ハンドルのグリップを握りながらクラクションを鳴らせるようにしてある。マツダR360クーペに設定された手動運転装置のハンドルレバー

 つまりこれは福祉車両でも自分で運転する人のための装置であり、車両購入後に販売店で取り付けられるため、必要になったときに福祉車両にできるのだ。装置の価格は当時で1万円。ちなみに、車両価格は33万円(ベース車両の2速ATは32万円)だった。

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