農作業や介護などの現場で活躍が期待できる
このコムスは販売台数の約70%が法人で、個人所有は30%以下ではあるが、個人のうち90%近くは男性で、60%近くが60歳以上という構成比率になっている。高齢者による交通事故が注目されているが、より身近な移動手段として、一人乗りの超小型EVという選択肢も一度考えてみる機会があってもいいのではないか。
というのも、生活のなかでのちょっとした移動だけでなく、コムスは仕事などでも活用できる可能性があるからだ。コムス購入者の約70%が法人ということは、営業や荷物の配送など仕事で利用可能であることを示している。
また、東京大学大学院の小竹(しの)元基工学博士は、コムスを使った「山コムス」や「トマトコムス」といった試作車を開発し、木材の運搬やトマトの収穫作業に使えることを実証している。軽自動車でさえ入り込めないような畦道を、コムスなら入って行けるのである。もちろん、ナンバープレートを付けて公道も走れるので、仕事場への往復と、農作業など現場での運搬の両方に活用できる。ほかにも「ケアコムス」や「ママコムス」というのも作り、介護や小さな子供の送迎などでも利用可能であることを示した。
そうした一人乗りEVが、なぜ高齢者に良いかといえば、運転操作がより簡便になるだけでなく、ほかのEVと違い、100Vのコンセントで充電することを基本とし、例えばコムスであれば6時間で満充電になる。したがって減少が続くガソリンスタンドへ給油に行かずに済み、またエンジンオイル交換など保守管理の手間や経費も減る。
なおかつモーター駆動は瞬発力に優れるので、万一の際に瞬時に加速し、事故を防ぐことにもつながる。安全は減速だけでなく加速の俊敏さが、危険から逃げるという点で活きることもあるからだ。もちろんEVならモーター駆動であるがゆえに、ワンペダル操作や、回生を活かしたペダル踏み替えでの空走時間をなくし、エンジン車ではできなかった減速時の安全性向上にも役立つのである。