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「超小型EV」は高齢化社会をも救う! 日本の社会を変える可能性を帯びた「知られざる」実力とは

2021年以降、急速に普及する可能性

 超小型モビリティはこれまでコンセプトカーのような扱いで、市街地などでの実証実験は行われてきたが、具体的な製品や市場導入の話が進まなかった。しかし、来年(2021年)以降、現実味を帯びてくるかもしれない。

 後押しとなるのは、昨年の東京モーターショーでトヨタが公開した2人乗りの超小型モビリティの市場導入へ向けて、国土交通省で型式認定の枠組みが検討され、創設されそうな状況にあるからだ。

公道を安全に走れる性能を実現

 これまで原動機付自転車(通称、原付)の次は軽自動車の規定しかなく、超小型モビリティが認証を受け、広く市販できる法的根拠がなかったのである。そこで限定的な形式で大臣認定などによるナンバープレートが交付され、実証実験は行なわれてきた。

 トヨタの「i-ROAD(アイロード)」や日産の「ニューモビリティコンセプト」などが、シェアリングサービスや観光などで使われた程度に終わっている。

 一方、コムスというトヨタ車体が作る一人乗りEVは原付に含まれるミニカーの分類で、すでに公道を走っている。全長約2.4mで、全幅が約1.1m、最高速度は時速60km。モーター性能は、最高出力が5kWで、最大トルクは40Nmだ。

 5kWと聞くと非力に思えるだろう。軽自動車は約35kWである。しかし、最大トルクは軽自動車が約60Nmであるのに対し、コムスは40Nmで、車両重量が軽自動車の2/3ほどしかないので、車両重量当たりのトルク値を比較するとほぼ同等となる。かえってモーターの瞬発力に驚くのではないか。一充電走行距離はJC08モードで58kmあり、日常の移動には十分な性能を備えているといえる。

農作業や介護などの現場で活躍が期待できる

 このコムスは販売台数の約70%が法人で、個人所有は30%以下ではあるが、個人のうち90%近くは男性で、60%近くが60歳以上という構成比率になっている。高齢者による交通事故が注目されているが、より身近な移動手段として、一人乗りの超小型EVという選択肢も一度考えてみる機会があってもいいのではないか。

 というのも、生活のなかでのちょっとした移動だけでなく、コムスは仕事などでも活用できる可能性があるからだ。コムス購入者の約70%が法人ということは、営業や荷物の配送など仕事で利用可能であることを示している。

 また、東京大学大学院の小竹(しの)元基工学博士は、コムスを使った「山コムス」や「トマトコムス」といった試作車を開発し、木材の運搬やトマトの収穫作業に使えることを実証している。軽自動車でさえ入り込めないような畦道を、コムスなら入って行けるのである。もちろん、ナンバープレートを付けて公道も走れるので、仕事場への往復と、農作業など現場での運搬の両方に活用できる。ほかにも「ケアコムス」や「ママコムス」というのも作り、介護や小さな子供の送迎などでも利用可能であることを示した。

 そうした一人乗りEVが、なぜ高齢者に良いかといえば、運転操作がより簡便になるだけでなく、ほかのEVと違い、100Vのコンセントで充電することを基本とし、例えばコムスであれば6時間で満充電になる。したがって減少が続くガソリンスタンドへ給油に行かずに済み、またエンジンオイル交換など保守管理の手間や経費も減る。

 なおかつモーター駆動は瞬発力に優れるので、万一の際に瞬時に加速し、事故を防ぐことにもつながる。安全は減速だけでなく加速の俊敏さが、危険から逃げるという点で活きることもあるからだ。もちろんEVならモーター駆動であるがゆえに、ワンペダル操作や、回生を活かしたペダル踏み替えでの空走時間をなくし、エンジン車ではできなかった減速時の安全性向上にも役立つのである。

高齢者の社会貢献にも繋がる可能性も

「元気な高齢者が改良したコムスを使って現役で働けることは、若者を助けることにもつながるのではないか」と小竹博士は語る。高齢になれば体力も落ち、長時間の重労働は無理であっても、若い世代が一人でやることを2〜3人が交代でやれば、事を成し遂げることができる。高齢者が介護だけでなく仕事も相互扶助で一緒にやることが、社会を動かすことにつながるというわけだ。また健康寿命の増進にもなるだろう。

 そうした新しい社会の創造は、新型コロナウィルスの影響で提唱されている新しい生活様式とともに、逆ピラミッドといわれる若者世代の減少による人口減少の日本で、国を支え、国民の生活を支える新たな仕組みになっていくのではないか。

 一人乗りEVのコムス以外では、TAJIMA-EVが二人乗りのタジマ・ジャイアンを販売している。だが、まだ超小型モビリティとしてのEVは選択肢が広がっているわけではない。

 自動車メーカーは、ただ単に環境や効率化のための超小型モビリティではなく、国づくりのための新たな移動手段と暮らしの創造まで広く、深く踏み込んで超小型モビリティの未来を考えれば、より現実的な姿が具体的に見えてくるのではないだろうか。

[参考資料]
http://www.k.u-tokyo.ac.jp/info/entry/22_entry310/
http://www.atl.k.u-tokyo.ac.jp/

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