リアルとヴァーチャルが融合した新スポーツ
ビデオゲームで対戦する新しいスポーツとして、今世界中で注目を浴びているのがeスポーツ。格闘技やシューティング、サッカーなど、様々なジャンルの競技が世界中で開催されており、海外では数10億円という高額な賞金が出る大会もあるほどだ。
そのモータースポーツ版として、国内で新たに「JeGT GRAND PRIX(以下、JeGT)」というシリーズ戦が開催されることが決定。スーパーGTなど、リアルなレースに参戦するレーシングドライバーも参戦、しかも国内最高額の総額500万円という賞金などが話題を呼んでいる。
本物さながらのレーシングゲーム
10月12日に、大会を運営するNGMとメインスポンサーのオートバックスセブンによりオンライン記者会見が行われたJeGT。これは、eスポーツの中でも、クルマのレーシングゲームで腕を競う「eモータースポーツ」と呼ばれるジャンルだ。
競技はオンライン対戦形式で行われ、ソフトにはプレイステーション4の「グランツーリスモSPORT」を採用。各選手たちは、ハンドルやアクセル、ブレーキなどが備わったドライビングシミュレーターのようなコントローラーを使い、実際のレースさながらテクニックを駆使して、いかにマシンを速く走らせるかを競う競技だ。
運営するNGMはeスポーツを専門とする企業で、メインスポンサーにはスーパーGTなどリアルなレースもスポンサードする、カー用品チェーン店「オートバックス」などでお馴染みのオートバックスセブン。ほかにも、協賛企業にロジクールやブリッド、カーメーカーでは日産自動車が後援することになっている。
開催レースには、本物のレーシングチームや自動車関連企業を母体とするチームが参加する「TEAM BATTLE」と呼ばれるチーム戦と、「INDIVIDUAL MATCH」という個人戦の2クラスがある。
チーム戦には、レーシングチーム所属のプロレーサーまたは自動車関連企業の社員などが2~3名ずつ参加し、各選手が獲得した総合ポイントで順位を決める。12組~最大20組までの参戦を予定しており、2020年10月の段階では、ARTAやHKS e-Motor Sports、NISSAN Trust Racingなど、スーパーGTなど人気レースでもおなじみのチームが名を連ねている。
一方、個人戦に参加できるのはプロレーサーまたはJeGTが実施する選定会JDS(JeGTドライバーズセレクション)で合格した認定ドライバー。出場枠は12人~最大36名で、2020年10月の段階では15名の参戦が決まっており、運営側では今後もJDSを各地で開催することで、参加選手を増やしていく方針だ。
シリーズ戦は全5戦を予定する。まず、2020年12月から2021年2月までに4回の予選ラウンドを実施。そして、各予選大会の獲得ポイントの上位、チーム戦8チーム、個人戦8名が2021年3月のファイナルへ進出する。
予選はコロナ禍の影響もあり、基本的にオンラインで開催されるため、選手たちは自宅などから参戦することになる。
最終戦のファイナルは、大阪府にある施設REDEEを使用しオフラインで実施されるほか、エキシビションや様々なイベントも同時開催される予定。また、各大会はYouTubeのJeGT公式チャンネルで生配信されることになっている。
ちなみに、ファイナルでは賞金にも注目だ。チーム戦の優勝が150万円、個人戦のチャンピオンが100万円で、そのほか様々な部門賞などが設定される予定。総額は、前述の通り500万円。現在、国内のeモータースポーツはJAF主催の大会などがあるが、それらのうちで最高額になるという。
真に速いのはプロレーサーかトップゲーマーか?
特に、この大会で注目されるのは、本物のレースに参戦しているプロドライバーと、トップゲーマーが直接対決をする点だ。
レースの設定コースには、富士スピードウェイや筑波サーキットなど、実際にレースが開催されているサーキットも多く、しかも前述の通り、リアルな操作感を持つドライビングシミュレーターを使用。コーナリング中や加減速時のGなども本物さながらだし、タイヤの摩耗が激しい場合はピットインをして交換が必要など、本物のレーシングマシンと同様のテクニックや判断、知識などが必要となる。
そんなリアルなイコールコンディションで、「真に速いのはゲーマーか? プロレーサーか?」を、ヴァーチャル上で競うのがこの大会なのだ。
運営するNGM代表取締役の北浦諭氏によると、「例えば、格闘技のeスポーツでは、ゲームの選手がプロの格闘家であることはほぼありません。一方、eモータースポーツのJeGTでは、プロレーサーが参戦できるほか、将来的にトップゲーマーが本物のレースに出ることも考えられます。ほかのeスポーツに比べて、リアル(実際の競技)との親和性が非常に高いのです」という。
つまり、JeGTはヴァーチャルのレースでありながら、かなり本物のレースに近く、それを制すればリアルなレースでも十分に通用するということだ。しかも、スーパーGTなどで活躍するプロレーサーを、トップゲーマーが破る可能性は十分にある。
さらに、北浦氏は「(トップゲーマーの)選手が、将来リアルなレースで活躍できるようにすることも、大きなビジョンのひとつ」だという。そして、その道筋となるような布石も組み込まれている。それが、JeGTドラフト会議だ。
これは、2020年11月に開催が予定されているもので、チーム戦のエントラントが希望するJeGT認定ドライバーを指名し、交渉が成立すればその選手をチーム所属にすることができるという制度だ。
北浦氏は、この制度が「リアルとヴァーチャルの接点となり、将来的にリアルなレースへの(トップゲーマーたちが出場する)きっかけになること」を望みたいという。
メインスポンサーであるオートバックスセブン代表取締役の小林喜夫巳氏は、発表会で「今、自動車業界は若者のクルマ離れなどが問題となっていますが、JeGTが若者にとって、クルマに触れる新たな役割となることを目指したい」と語った。
現在、eモータースポーツは主に10代~30代後半の若い世代に人気だという。JeGTが、レースはもちろん、市販車などクルマ全般について、若者にもっと興味を持たせるためのい起爆剤となることに期待したい。
【GeGT GRAND PRIX開催日程】
・予選ラウンド1:個人戦2020年12月19日(土)/チーム戦2020年12月20日(日)
・予選ラウンド2:個人戦2021年1月9日(土)/チーム戦2021年1月10日(日)
・予選ラウンド3:個人戦2021年1月30日(土)/チーム戦2021年1月31日(日)
・予選ラウンド4:個人戦2021年2月20日(土)/チーム戦2021年2月21日(日)
・ファイナル:2021年3月予定/会場:REDEE(大阪府)
【参考サイト】
◆JeGT公式サイト
www.jegt.jp
http://www.jegt.jp
◆JeGT公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCid08Oniv1UkM_9DwTzGhEg