顔だけでなくボディも変えたトランスフォーム車たち
人には「全くの別人になりたい」という変身願望があるといわれるが、クルマのカスタムにも全く別の車種に変身させてしまう手法がある。その代表例が「顔面スワップ」や「顔面移植」と呼ばれる手法で、ベース車のフェイスデザインを高級車や新型車、海外仕様車など、他モデルの雰囲気ものに変更してしまうものだ。
ただし、顔だけ変えてしまうとクルマ全体のバランスが悪くなるケースもあり、実際には他の箇所にも手を加えることも多いのだが、中にはボディ全体を全く別物にしてしまうという大技も存在する。ここでは、そんな顔面移植に飽き足らず、ボディ全体を変身させてしまった究極のトランスフォーム車たちを紹介する。
1)RAV4がランボルギーニ・ウルス風に!
イタリアン・スーパーカーの代名詞として知られるランボルギーニが、初のSUVとして2018年に発売し大きな話題を呼んだ「ウルス」。その迫力あるスタイルを彷彿とさせるボディを身に纏ったのが、ここで紹介するトヨタのクロスオーバーSUV「RAV4」だ。
製作したのは山口県にあるショップ兼メーカーの「シーザー」で、同社オリジナルブランド「Albermo(アルバーモ)」のボディキットを装着したもの。つまり、外装を全てオリジナルのパーツに変更した仕様なのだ。
細部をよく見ると、実際のウルスとは多少違うところもあるが、それでも「ウルス」の雰囲気を上手く掴んだデザインとなっているのには脱帽! 特に、フェイスデザインは、バンパー左右の特徴的なエアダクトやシャープなヘッドライトなど、ウルスの雰囲気を上手く表現している。
もちろん、前後フェンダーやリヤバンパー、テールランプなどもオリジナルで、全体的にウルスのスタイルを彷彿とさせるフォルムへ見事に変身させている。
この車両は、2020年2月開催のカーショー「大阪オートメッセ」に出展されたものだが、このボディキットは販売されていない。これだけインパクトがあるクルマだけに、ちょっと残念だ。
2)フェラーリ風スタイルのプリウス!
今や、大衆車の代表選手級にポピュラーとなったトヨタのハイブリッドカー「プリウス」だが、そのフォルムをフェラーリの高級スポーツカー「ポルトフィーノ」風にしたのがコチラ。
ポルトフィーノといえば、2017年に登場したFRクーペカブリオレ2+2モデル。オープンカーのイメージが強いが、電動格納式ハードトップを閉じればクーペモデルとしてのフォルムも楽しめるのも魅力。このプリウスは、まさにポルトフィーノがルーフを閉じた時のスタイルをイメージさせるボディキットを装着している。
製作は前述の「シーザー」で、こちらも特にフェイスデザインが秀逸。大きく口を開けた精悍なフロントグリルやバンパー左右の開口部など、かなりポルトフィーノのイメージに近いのが特徴。また、顔に合わせて、サイドステップやリヤバンパーなどもオリジナルに変更。レッドをベースにシルバーのラインを入れたボディペイントなども功を奏し、全体的にとてもプリウスがベースとは思えないほどのスポーティさを演出している。
ちなみに、装着されているエンブレムは、フェラーリのシンボルである「跳ね馬」ではなく「鶴(ツル)」。これは、シーザーがある山口県のシンボル(県鳥)がナベツルで、それをイメージして跳ね馬っぽいデザインにしているのだとか。
こういった細部に遊び心を入れるのも、カスタムの面白いところ。なお、こちらのキットも、残念ながら販売されていない。
3)ラシーンで小型なハマー風
米GM(ゼネラルモータース)のSUVブランド「ハマー」は、ゴツいスタイルで2000年代前半に一世を風靡したクルマ。GMの破綻により、2010年に一旦ブランドは終了したが、最近になり復活し、GM初のEV(電気自動車)となるピックアップモデルが2021年に発売されることが発表されている。
ここで紹介するクルマは、かつて日産が販売していた「ラシーン」(1994年~2000年)で、ハマー風を表現したものだ。当時、レトロでおしゃれなデザインが人気だったラシーンが、インパクトあるハマー的スタイルへ見事変身しているのは圧巻! これは、ESBがリリースする「Parasite(パラサイト)」というブランドのボディキットを装着したもので、モデル名は「LUMMERN H4(ラマーンH4)」。
ハマーとラシーンをもじったネーミングで、H4は当時のハマーには、ボディサイズが大きい順にH1、H2、H3があったが、その下のサイズということで付けたモデル名だろう。
キットの主な内容は、フロントバンパー、メッキフロントグリル、サイドステップ、リヤバンパーなどの4点セットを基本とし、ボンネットダクトやマフラーなども用意。ヘッドライトなどもオリジナルを装着することで、まさに当時のハマーっぽさを上手く演出。おしゃれなラシーンがベースとは思えないような、男っぽさをプンプンと漂わせる仕様となっている。
ハマーは、車高を上げるハイリフトというカスタムが、特にH2やH3で人気だったが、このラマーンH4も車高を上げればさらにグッと似てくるはずだ。
4)アルファード顔に全長7mリムジンの正体は?
トヨタの高級ミニバン「アルファード」の顔に、全長約7mの長いボディを持ったこのクルマの正体は、アルファードの兄弟車「ヴェルファイア」。
アクセルオートコーポレーションが手掛ける「VICTOREX(ヴィクトレックス)」というブランドのストレッチリムジンだ。
ストレッチリムジンとは、ボディを延長して車内を豪華で快適な仕様にしたカスタム車のこと。特にアメリカで多く作られており、VIPやセレブなどが乗るクルマとして、特別に作られた高級仕様のクルマ。
ヴェルファイアのボディを2m延長したゆとり満点の室内は、ホワイトを基調した高級感溢れる仕様に変更。後席には4つのシートを装備し、27インチの大型モニターやオーディオ類も完備。海外のリッチマンたちが乗る、プライベートジェット顔負けの豪華な装備が満載。
また、前述の通り、フロントマスクはグリルやバンパー、ヘッドライトなどをアルファード用に変更。リヤセクションも同様にアルファード化している。同じトヨタの高級ミニバンではあるが、どちらかといえばヴェルファイアの方がややヤンチャなイメージがあるのに対し、アルファードのフェイスデザインなどにより、押し出し感はあるが、どこか落ち着いた雰囲気も演出している。
顔だけでなく、ボディを延長することにより、見た目のインパクトや極上の高級感は最上級クラス。運転するより、ゆったりと室内でくつろいでみたい1台だ。
5)K12型マーチをレトロなフィアット500風
小柄でキュートなスタイルが人気のフィアットのコンパクトカー「500(チンクエチェント)。1936年に生産された初代から現在まで長い歴史を誇るクルマだが、その中でも世界中の旧車好きに人気がある1957年~1977年に生産されたモデルをどことなく感じさせるスタイル。
太陽興産が製作する「マーチリッツ」というネーミングのコンプリートカーなのだが、ベースとなるのは2002年~2010年に生産された3代目マーチ(K12型)。カエルの顔をイメージさせる、可愛いフェイスデザインが人気だったモデルだ。
マーチリッツは、それをベースに外装を全てオリジナルに一新。特に、顔は、丸目のヘッドライトや柔らかな膨らみがあるフロントグリル、ラウンドしたボンネットなどにより、レトロな500をイメージさせるデザインに見事変身させている。
また、リヤのバンパーやテールライトなども全て自社製パーツに変更することで、全体的にビンテージ感が高く、小粋なイタリア車的な雰囲気を醸し出している。
「顔面移植」は、クルマのイメージをガラリと変えるにはかなり有効なカスタムだ。ただし、単純に顔を変えさえすればいいものでもない。大切なのは「全体のバランス」。その意味で、今回挙げた5台は、その好例だと言えるだろう。