「世界最強のロードゴーイングカー」をキーワードに開発
いろいろと規制の厳しい日本国内において、コンプリートカーを作り上げるのは、多くのチューナーにとって夢であり、ユーザーにとっても憧れの存在。そうした中で「最強・最速」といえるのは、2000年のNISMOフェスティバルでデビューし、全国の名うてのGT-Rチューナーが持ち込んだ渾身のデモカーと真剣勝負「チューナーズバトル」で圧勝した「NISMO R34GT-R Z-tune」だろう。
日産のワークスチームであるNISMOが「世界最強のロードゴーイングカー」、「TOP OF THE GT-R」をキーワードに造り上げた究極のGT-R。今シーズン、スーパーGTのNDDP RACING with B-MAXチームの監督を務める、NISMOの田中利和氏が開発責任者として陣頭指揮を執り、日本国内の主なサーキットはもちろん、ニュルブルクリンク(以下:ニュル)にまで持ち込んでテストを敢行。
日産ワークス=NISMOの名にかけて、第二世代GT-Rの集大成“世界最強のロードゴーイングカー”と呼ぶにふさわしいパフォーマンスをもって、2005年に市販化された。限定19台、1774万5000円(税込み)というプライスは当時ニュースになった。(ベースのR34GT-Rは、2002年に生産終了しているため、NISMO R34GT-R Z-tuneは、走行距離3万km以下の極上ユーズドカーをベースに、車体はバラバラに分解した上で新たにボディ補強などを施しながらハンドメイドで組み立てられている。)
だが、「NISMO R34GT-R Z-tune」は、それだけの価値があるクルマで、エンジンは「RB26DETT改Z2」とネーミングされた専用チューン。GT500のレーシングカーと同じく、ボア1mmアップ、ストローク4mmアップの2.8リッター仕様となった。
ターボはニュル24時間レースなどでも実績のあるIHI製の大容量タービンで、カム・ヘッドから腰下まで、NISMOの専用部品を惜しまず投入がなされた。一基一基、NISMOのエンジン職人が手組みで仕上げ、500馬力以上のパワーを誇りながら、市販車に勝るとも劣らない耐久性を与えている。
もちろん、吸排気系やコンピュータまでZ2エンジンに合わせたスペシャルセッティングになっていて、高負荷高回転の全開領域だけでなく、ストリートでもレスポンスよく走れるドライバビリティも兼ね備えていた。
また、サーキット走行でも音を上げないようにラジエター、オイルクーラー、インタークーラーなどの冷却系はレーシングカー並の余裕を持たせてあった。
海外では6800万円で売りに出たというニュースもあった
ちなみにドライブシャフトはカーボン製。シャシーもワークスならではの仕事っぷりで、ボディは一度ホワイトボディの状態にし、ドアまわりをスポット増し。一部にはCFRPの成形品を張り込んで剛性アップを図り、レーシングカーづくりのノウハウを注ぎ込んでいる。
サスペンションはF1マシンやGT500でおなじみのザックスのダンパーでチューニングし、ジオメトリーやブッシュ類も専用チューン。ブレーキもブレンボのスペシャルで大容量化し、ABSもオリジナル仕様。エアロパーツもGTマシン直系の空力&冷却優先デザインで、フロントフェンダーは片側15mmもワイドになった。ボディカラーも「Z-tuneシルバー(KY0)」というコンプリート専用色を用意していた。
シートも一般的なクロームで鞣したレザーではなく、高級なタンニンレザーとアルカンターラの組み合わせ。オーナー限定のナンバリングプレートのついたカーボン製のアタッシュケースやエクセーヌ製の車検証ケースもついていた。
エアコン・オーディオのついたロードゴーイングカーでありながら、筑波サーキットのラップタイムは1分フラット、ゼロヨン10秒フラット……という俊足っぷりを見せた。
最終的な生産台数は「NISMO R34GT-R Z-tune Proto」と保存車の2台を含め19台。うち、13台が日本国内、4台がオーストラリアやタイなど海外に割り当てられたので、これまでも中古車市場に出回ることはほとんどなかった「NISMO R34GT-R Z-tune」。海外で6800万円で売りに出たというニュースもあったが、お金で買えない価値のあるクルマになりつつある。