スバル走りのフラッグシップマシン「インプレッサWRX」
ラリーをはじめとしたモータースポーツでの活躍など、インプレッサ時代を含みWRXはスバルにとってイメージリーダーの1台だ。しかし、昨年で名機EJ20ターボ+MTを搭載していたWRX STIは姿を消し、現在はEJ20ターボの後継となるFA20ターボ+CVTというパワートレーンに、運転支援システム「アイサイト」を組み合わせた、間口の広いスポーツセダンとなるWRX S4のSTIスポーツが販売されているのみである。
WRXはSTI、S4ともに近い将来スバル新世代のSGP(スバルグローバルプラットホーム)を使ったスポーツセダンとして再出発すると思われるが、現在は充電期間的な時期ということもあるため、いま一度WRX STIの歴史を振り返ってみたい。
初代モデル(1992年から2000年)
歴代WRX STIのベースとなるインプレッサは、レガシィの小型版として1992年に登場。レガシィの小型版というコンセプトは、当時WRC(世界ラリー選手権)にレガシィで参戦していたスバルが、次期マシンのベースとして「戦闘力向上のためレガシィを小さくしたモデルが欲しい」という目的も含まれていた。
その考えは当時ギャランでWRCに参戦してた三菱自動車も同じで、初代インプレッサと同時期に宿命のライバルであるランサーエボリューションをリリースしている。
WRX STIは、当初インプレッサのスポーツモデル並びにイメージリーダーという役割を持ち、EJ20ターボ+4WDの性能機構そのままのWRXとして登場した。その後WRXは軽いボディにパワフルなエンジンということで当時の日本車最強軍団の1台となり、WRX STIは「競技で有利になるチューニングを施したコンプリートカー」として1994年に放たれていったのだ。
特に遅れて追加されたWRX STI RAはRA(レコード・アテンプト、記録に挑戦する)が意味するように、競技ベース車のためエアコン等の快適装備を装着しない代わりに、最後のWRX STIまで続くDCCD(ドライバーズコントロールセンダーデフ)を装備していた。
DCCDの装着により走るシーンに応じた前後駆動力配分をドライバーが選べるようになったほか、ラリーやジムカーナのパーキングブレーキを使った小さなターンの際にはセンターデフがフリーとなり、クルマがクルリと向きを変えるようになるなど、戦闘力は大きく向上した。
WRX STIは1995年のバージョン ll からカタログモデルとなり、ランサーエボリューションとの死闘もあり毎年改良され、バージョンⅥまで進化。また初代インプレッサWRX STIにはセダンのほか、スポーツワゴンや1997年からWRCのトップカテゴリーとなったWRカーのベースとなったクーペもあった。
2代目モデル(2000年から2007年)
2000年登場の2代目インプレッサにもベース車から若干遅れてWRX STIが追加された。WRX STIに限らず2代目インプレッサは8年振りのフルモデルチェンジということもあり、ボディ剛性を飛躍的に高めるなど、クルマ自体の質感が大きく向上した。
しかし、WRX STIに関してはボディ剛性の向上などが大幅な重量増につながり、その点は一般ユーザーがロードカーとして使うにはプラスだったが、2代目インプレッサが出た直後に登場したランサーエボリューションVllの性能向上が強烈なものだったこともあり、競技車両としてのポテンシャルやイメージではランサーエボリューションに劣勢なところも否めなかった。
そのためスバルも初期モデルの登場から約1年後の2001年冬に、大幅な軽量化などを施しサーキットなどでの速さに特化したWRX STIタイプRAスペックCを追加。ランサーエボリューションVllと互角の速さを取り戻し、2002年にビッグマイナーチェンジされ俗にC型と呼ばれるモデルでは、フロントマスクの変更に加えエキゾーストマニホールドを等長にするなど数えきれないほどの改良が行われた。
さらに2004年のD型ではタイヤサイズの拡大となり、それに伴いホイールのPDCも100から114.3に変え、耐久性も向上した。
2005年のF型では2代目インプレッサとしては3つ目のフロントマスクに変更されただけでなく細かな改良が多数施される。2006年のG型ではエクステリアなどがジェントルなAラインが追加され、2代目モデルは完全燃焼で3代目モデルに引き継がれた。