3代目モデル(2007年から2014年)
3代目インプレッサベースの3代目WRX STIもベース車から遅れて追加された。3代目モデルの大きな特徴は2つで、1つ目は当時WRCでスバルのドライバーだったペター・ソルベルグ選手の進言もあり、ラリーでの戦闘力を上げるため5ドアハッチバックとなった点。もう1つはクルマの土台となるプラットホームを、当時のスバル車では最新のリアサスペンションの形式となるストラットからダブルウィッシュボーンへの変更がなされたSIシャーシにスイッチしたこと。これにより走りが全体的にしなやかなものとなり、クルマとしての質感が大きく向上することになる。
そのためサーキットでのラップタイムに代表される絶対的な速さは2代目モデルのC型以降に軍配が挙がるのかもしれないが、この頃から絶対的な速さはあまり要求されない時代となっていたこともあり、3代目モデルでのコンセプト変更は大成功だったといえる。
3代目モデルは4代目モデルのS4につながるところも感じる2.5Lターボ+5速ATのAラインや、空力性能の有利さからサーキット向けというキャラクターも持つ4ドアセダンの追加があった。
2010年に4ドアセダンが追加されたタイミングから車名がインプレッサから独立したWRX STIに変わったことも目立ったが、2代目モデルまでのような大幅な改良というのはなかった。
4代目モデル(2014年から2020年)
4代目モデルもプラットホームはSIシャーシを継続し、4ドアセダンのみという成り立ちで、エンジンもFA20ターボではなくEJ20ターボのままだったのは「ラリーをはじめとした競技の現場で即戦力となるよう実績のあるものを選んだため」と言われている。
4代目モデルの改良はランサーエボリューションとの死闘が終わったこともあり、2017年のD型でDCCDの制御や19インチへのタイヤサイズ拡大を伴うブレーキローター&キャリパーのサイズ拡大が目立つ程度だ。それも販売台数や法規対応を考えると「存続に必要な開発資源」が年々大きなものになっているのを考えると、やむを得ないところだったのだろう。
むしろ4代目モデルではハンドメイドされターボチャージャーも変更されたスペシャルエンジンを搭載したS207、S208、タイプRA-AといったSTIのコンプリートカーも存在感を増したことが印象的だった。
そしてWRX STIは昨年の東京モーターショーの出展直後に市販化された、エンジン内部の部品の公差をより少なくしたバランスドエンジンを搭載し、内外装をゴールドのホイールやウルトラスエード巻ステアリングでドレスアップした555台限定のファイナルエディションを花道に絶版となった。
スバルのブランドイメージ向上に絶大な役割を果たしたWRXだけに、STI、S4ともに2020年代に合った姿でなるべく早期に復活してほしい!