タイヤ1~2本分といえども車幅感覚は非常に重要
スポーツドライビングのセオリーのひとつに「アウト イン アウト」がある。なぜ「アウト イン アウト」が有効かというと、他の条件が同じ場合、コーナーの半径が少しでも大きい方が、より速い速度で走ることが出来るため。
どんなクルマでもヘアピンコーナーよりは中速コーナー、中速コーナーよりも高速コーナーの方がより速く通過できるのは想像できるだろう。それと同じように、コーナーでもコース幅を端から端まで目一杯使った、アウト イン アウトのラインで走るのと、コース幅の真ん中付近のラインを通るのとでは、速度がけっこう変わってくる。
したがって、コーナーはアウト側の縁石ギリギリから進入し、クリッピングポイントの縁石をなめるように通過。出口側もアウト側の縁石を軽く踏むぐらい膨らんで立ち上がるのがタイム短縮の近道となる。
しかし、車幅感覚が鈍い人は、この縁石ギリギリの走りが出来ない……。
サーキットではコース幅の数10センチが大きな差になる
たしかに「クルマ一台分もコース幅を余らせ、コーナリングをしていては、タイムロスも大きいだろうが、数10センチ単位でも、タイムに影響するのだろうか?」と思う人もいるだろう。
その数10センチが大きな差になるのが、サーキット走行なのだ。例えばハイグリップラジアルを履いた、あるクルマのコーナリングフォースが最大時の横Gが1Gだったとしよう。このクルマでヘアピンコーナー(180度)を、半径25mのラインでタイヤの横力を最大限引き出したコーナリング(横G=1G)をしたとする。このときの旋回速度を計算すると、56.5km/hとなり、半円=ヘアピンの通過タイムは5.0秒になる。
このようにサーキットでより早いタイムを刻むためには、車両感覚を磨くことが欠かせない。もっと速いタイムで走りたい、自己ベストタイムを更新したいと思っている人は、日頃から車幅感覚やタイヤの位置に意識を傾けて、まずは、コーナー入口とCP(クリッピングポイント)、出口の3カ所の縁石にタイヤを確実に触れさせることから練習してみよう。