運転操作の面白さを教えてくれたハチロク
1980年代に、まさに人気を集めたのは、「ハチロク」と呼ばれたトヨタカローラレビンのAE86型だ。
そもそも、カローラレビンとスプリンタートレノは、70年代の2代目カローラの高性能車として誕生し、レース車や日産フェアレディZのZGでしか見ることのなかったオーバーフェンダーが、大衆車のカローラ/スプリンターでも取り付けられた姿に、驚愕したものだった。
そののち、カローラもより上級車種を目指すモデルチェンジが続き、そして5代目のカローラでハチロクが生まれるのである。
それまでトヨタの直列4気筒DOHCエンジンを牽引してきた2T-G型から、新世代の4バルブDOHCエンジンとして新開発された4A-G型を搭載したことも、ハチロクに注目が集まる理由だった。しかしトルクのやや薄いエンジンで、変速機は全体にローギア傾向であり、高速道路で運転するにはエンジン回転数が高くなりすぎてうるさかった。
しかし、フレッシュマンレースなどサーキットでは後輪駆動であること、比較的軽量なクルマであったことなどで、活躍した。そしてスターが誕生する。「ドリキン」こと土屋圭市だ。そもそも注目を集めたクルマだったが、彼の登場である種の伝説のクルマになった。結果、のちに86というスポーツカーも生まれることになる。
振り返れば、まだ衝突安全性能が声高に言われ、重要視される前の時代、軽いことが運転操作の面白さを誰にも味わわせてくれた。エンジンが非力でも、軽さによって運転の醍醐味を存分に、しかも比較的安価に楽しめた時代だった。