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タントが選んだあえての「30度」! 助手席回転シートに注いだ情熱が圧倒的だった

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TEXT: 御堀直嗣(Mihori Naotsugu)  PHOTO: ダイハツ、Auto Messe Web編集部

「3現主義」に基づいた万人のための商品開発が求められる

 ダイハツは、新型タントを開発する際に、事前に産官学民の協同による福祉車両の新装備開発の研究を行っている。具体的には、産は販売店を含めたダイハツグループ、官は自治体、学は理学療法士協会、民は地域の消費者だ。これを、地域密着プロジェクトと呼ぶ。

 販売店に、高齢者など消費者を、自治体を通じて招き、そこに開発車両を持ち込みながら、理学療法士の立会いの下で、福祉車両の使い勝手を検証し、データにまとめて考察した。車内の手すり一つの使い勝手から、クルマへの乗り降りや、乗車後の座席の移動など、様々な観点から体験調査が行われたのである。ダイハツ・タントを使った産学共同研究風景

 福祉車両の開発では、さまざまな調査や検証が行われているはずだが、健常者の視点での設計は容易ではない。よかれと思って開発した装備が、扱いにくかったり、利用に不安を残したりすることが起こりかねない。

 なおかつ福祉の現場では、駐車場所にゆとりがあることは少なく、路地や市道を入った先で使いたいということもある。まさに現場・現物・現実という実態を見て、経験して、はじめて最適な福祉車両が出来上がることになる。そのためには、関わるすべての関係者が時間や手間といった労力をおしまない取り組みが不可欠だ。ダイハツ・タントの開発には、現場の状況を知ることではじめて最適な福祉車両ができあがる

 しかも体調は、一人ひとり異なる例が多く、必ずしも一つの仕様ですべてを賄えないことも起こり得る。かといって、すべての人に合わせられるような調整機能を設けるのも、機構や原価などの点で難しい場合がある。商品として仕立て上げる落としどころも複雑だ。

 どれほどオーダーメードに近づけられるか。これも、試行錯誤や永年の経験、そして現場の声から解決の糸口が得られることになるだろう。その積み重ねが、標準車か福祉車両かという境界を無くした、本当の意味でのユニバーサルデザインにつながるのだと思う。ダイハツ・タントを使った産学共同研究風景

 すべての人が、いつかは福祉の助けを得なければならない年齢に達する。また、健常者と障害者という区別のない商品は、万人に役立つものでもあり、3現主義に基づいた万人のための商品開発が、今後いっそう求められることになるはずだ。

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