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「アウト・イン・アウト」だけでは攻略不可! 速く走るための「本当」のライン読みとは

セオリーは「アウト・イン・アウト」だが 「ミドル・イン・イン」だってありえる

 サーキットでタイムを縮める方法はもちろんひとつではない。パワーを上げる、良い道具をそろえる……、すなわち、ターボ車ならブーストを上げたり、いまよりもグリップ力の高いタイヤに履き替えるなどは、お金はかかるが手っ取り早い手段になるだろう。

 初心者のうちはチューニングしてパワーを上げたりと、そっちに気が取られがちだが、じつはそれよりももっと奥が深いのが、セッティングやラインどりといったお金がかからないほう。タイヤに空気を入れたり抜いたりするのはもちろんタダだし、車高調の減衰力を変えたりするのもそうだ。

 走るたびにタイヤの空気圧を4輪ともきっちり計測して、自分自身のデータを作るだけでも、秒単位でタイムを削れることは多々あるハナシ。そして、ラインどり。人によっては「やっぱ、ラインどりが一番大事でしよ!」という声も多い。ここでは、そんなラインどりについて、その重要性なりに、あらためて迫ってみよう。

●ラインどりのセオリーはアウト→イン→アウト

 コースの道幅をいっぱいに使って緩やかなカーブを描いてスムーズにコーナーをクリアすることが、サーキットを速く走る上での基本中の基本だと言われている。サーキットを速く走るためのラインどりは、アウト→イン→アウトがセオリー。コーナーに対して道幅の外側をアウト、内側をインと呼び、コーナーをどんな軌跡を描いてクリアしていくかを言い表したものである。ここでは、アウト/インに付け加えて、道幅の中央部分をミドルという言葉を使っている。 それでは、アウト→イン→アウトを説明していくのだが、U字のようなコーナーを思い浮かべてほしい。鈴鹿サーキットのヘアピンカーブであったり、富士スピードウェイならTGRコーナー(第一コーナー)みたいな。アウト→イン→アウトとは、コーナーの進入ではできるだけ外側(アウト)のラインを通り、車体を減速させつつそこから今度は一気にコーナーの内側(イン)へノーズを向け、クリッピングポイントからは外側(アウト)まで道幅いっばいを使って勢いよく立ち上がっていくラインどりのことを言う。
(※クリッピングポイントとは、ラインどりにおけるコーナーの最内側=インの部分)

 これがもっとも車速を落とさずに速くコーナーをクリアする方法である。仮に、進入をアウトではなくインから、さらには、立ち上がりもインにつくようなラインどりでは、カーブがキツくなり、必要以上に車速を落とし余計にハンドルを切らねばならなくなってしまうのだ。カーブがキツくなるとタイヤにも負担がかかるし、車速を落とすためにはブレーキの負担も増えてしまう。ラインどりひとつで、タイムも上がれば、タイヤやブレーキなどの消耗にも影響を与えることになるのだ。

●「基本」だが「絶対」ではない

 ラインどりの基本はアウト→イン→アウトと申し上げたが、それは、「コーナー単体で考えた場合」ということを申し添えねばならない。サーキットは、タイムを競い合ったり、レースをして順位を競うために、チャレンジングになるようにデザインされた、いくつものコーナーが連続する周回路であると言える。

 陸上競技場のようなサーキットをオーバルコースというが、同じ向きに曲がるコーナーと直線だけで構成されている。まさに、そのオーバルコースでは、常に、アウト→イン→アウトのセオリーが速く走るためのラインどりとして有効だが、国内にあるほとんどのサーキットがオーバルにはなっていない(国内ではオーバルコースはツインリンクもてぎにある)のだ。

 走るサーキットがオーバルではないのならば、次のようなラインどりを考えた方が現実的と言える。仮に、ヘアピンカーブのようなU字をしたコーナーが右→左と連続したとしよう。できあがったカタチからするとS字カーブとも言える。この場合、ひとつめのU字をアウト→イン→アウトでクリアすると、次のU字に対してはインとアウトの関係が逆になる。すなわちイン→イン→アウトで抜けざるを得なくなり、サーキットを速く走るための「道幅をいっぱいに使って、できるだけ緩やかなカーブを描いて曲がりたい」という原則から外れてしまう。

 この例では、ふたつめのU字の先がどんなコースレイアウトになっているかにもよるが、ひとつめのU字を、アウト→イン→ミドル(もしくはイン)のラインを取り、立ち上がるときにアウトに大きくはらむのではなく、ふたつめのU字がアウト(もしくはミドル)→イン→アウトになるようにコンパクトに立ち上がったほうが、スムーズに曲がれるというワケだ。

 ラインどりの原理原則はアウト→イン→アウトで間違いないが、次のコーナーの進入に合わせて、手前のコーナーをどうクリアしようかと考えることが、じつはラインどりの本質なのかもしれない。ということは、先の先の先のコーナーまでを予測して、手前の手前の手前のコーナーをクリアするぐらいの、『先読みのラインどり』が、本当の意味でのラインどりになるのだ。速く走るために、あえて、アウト→イン→アウトを通らないことも重要な選択肢のひとつになるのだ。

●雨でぬれた路面やダストで汚れたコーナーは?

 ここまでは、路面はドライで、タイヤダストや砂がコースに浮いたりしていない状態を前提にしてきた。しかし、サーキットを走る上ではもちろん雨の日もあるだろうし、他車がインカットして巻き上げた砂がコースに浮いているようなケースも想定しておかなければならない。

 状況や程度にもよるが、コースに砂が浮いていたり、コーナーの外側がタイヤカスで汚れていたり、ウェット路面であれば、大きな水たまりや川になっているようなところは、それらを避けるラインどりをしたほうが、いいだろう。

 それらの路面コンディションでは、コーナーのイン側に大きな水たまりがある場合は、アウト→イン→アウトではなく、アウト→ミドル→アウトを通って水たまりを避けるラインを見つけたほうが良いだろうし、外側がタイヤカスで汚れているような場合は、アウト→イン→アウトではなく、極端なケースではアウト→イン→インを通らないと、タイヤカスに車体が乗っかってしまい、どんどんとアウトに膨らんで行く可能性もあるから注意が必要だ。

 また、ヘビーウェット路面になると、雨が得意という人と、地元勢が軒並みタイムを上げてくることがある。後者の地元勢がなぜ速くなるかというと、そのサーキットにおいて「雨のライン」が存在するからだ。すなわち、地元勢は雨のラインを知っているということ。セオリーではあり得ないような、アウト→アウト→アウトのラインどりが雨では速いことを研究していたりもする。

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