サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

オイル交換はサーキット走行の「前」か「後」かの論争に「凄腕メカニック」が決着を付ける!

できれば走行「前」「後」どちらも交換がベストだが…

 クルマ好きな大人の趣味として定着しているサーキット走行やジムカーナ練習会などの参加型モータースポーツ(以下、まとめてスポーツ走行)。公道では味わえない速度領域やコーナーリングの楽しさだったり、速く走れたときのうれしさだったり、逆にイマイチだったときのモヤモヤなど、それらすべてひっくるめて「やり甲斐のある」趣味である。

 さて、スポーツ走行ではエンジンを高回転まで回したり、その状態をキープしたりと一般道とはまるで違う走り方をするため、エンジンに掛かる負担が大幅に増える。そのためスポーツ走行をする際にはエンジンオイルの交換が必須なのだけど、ここで取り上げるのはエンジンオイルの交換は走行の前に済ませるか、走行後に行なうのかということ。

 もちろん走行前と走り終えた後の両方でエンジンオイル交換を行なうのが理想ではあるけど、スポーツ走行をするには参加費、交通費、燃料代など含めて数万円の費用が掛かるし、適時ブレーキやタイヤなどの交換も必要になるので「経費は節約したい」と思う人もいるだろう。

 そこで今回は、「エンジンオイルの交換は走行に行く前? それとも行ったあと?」というテーマについて、サーキットタイムアタックのコースレコードを多く持つ実力派のチューニングショップに聞いてみたので、それをまとめてみよう。

安心なのは「走行前」の交換

 エンジンオイルには規格や粘度があるが、そういった性能を発揮させるためにベースオイルには粘度向上剤や摩擦軽減剤、酸化防止剤など各種の添加剤が混ぜてあって、新品オイルに交換していれば入れたオイルの性能をきっちり使うことができるだろう。

 でも、これら添加剤は使用していくうちに性能が低下していくものであり、さらにエンジンオイルには洗浄効果があるので走っていれば汚れが出てくるので、使用するほど総合的に性能は低下する。とはいえ、こうしたエンジンオイルも通常の交換時期が来る前の状態であれば、使用するのになんの問題もない。

 しかし、スポーツ走行時は高回転域を多用し、パワーも出し続けるのでエンジン温度も高くなるから、エンジンオイルにはそんな厳しい状況であっても十分な油膜を保持して潤滑作用や耐衝撃性、それに十分な油圧を保持することが求められる。

 しばらく使用したエンジンオイルであってもこの状況に耐えることはできるのかもしれないが、大事なクルマのエンジンを守ることを考えるといささかギャンブル的である。そうなればやはり、エンジンを目一杯使う走り方に対して確実に「大丈夫」と言えるのはスポーツ走行に向いた特性の新品エンジンオイルなので、原則として「走行前」のオイル交換がベターということになる。

走行前のいつ交換するのが正解?

 では、この「走行前」とはどれくらいの期間を指すかについて。仕事をしていればオイル交換をするタイミングが週末しか取れないことも多く、走行する一週間前での交換が精一杯ということもある。それにクルマをふだんの通勤に使っているので、新油に変えても本番前にそれなりの距離を走ってしまうことだってあるだろう。

 そんなとき、ドライバーが行なうべきことは「油温を上げすぎないようにすること」。つまりは本番まで「エンジンオイルを温存する」ように大人しく走り、ムダなアイドリングもしないという乗り方を心がける。これなら走りに関わる部分の性能劣化は抑えられるので、交換から多少期間が空いたとしても“良い状態”のエンジンオイルで本番のスポーツ走行が楽しめるだろう。

走行後のオイルはそのまま使用していて大丈夫?

 最後に「サーキットで酷使したエンジンオイルをそのまま使っていて良いか?」ということだが、これは長時間走ったとか、油温を上げすぎたということをしていなければ街乗り程度で使うのは大丈夫だろう。ただし、走行後のオイルの状況はその都度で違うので、浅い考えのみで判断するのは避けたい。

 エンジンオイルの状態を見る計器としては油圧計があるが、これはあくまでも現状を見るものであり、新油との状況比較として見るものではない(ロギングしているなど綿密なデータがあれば別)。また、低負荷であってもアクセルを踏むと油圧は上がるので、街乗りレベルで油圧からオイルの状況を読み取るのは難しい。

 そこで使うのがドライバーの感覚。アクセルを踏んだ際のトルク感などからもエンジンオイルの状態は判断できるので、ふだんからエンジン特性を意識しながら乗り、ドライバーの感覚センサーを鍛えおくことも必要だろう。

モバイルバージョンを終了