スズキの韋駄天「キャリイ」もこだわりのデザインで登場
ヤヌス以外にも前後対称のクルマは、100年余りのクルマ史の中に、何台も登場しています。
例えば1920年代にドイツで誕生したハノマーグの2/10馬力などは、サイドビューで見る限り前後対称のシルエットを持っています。
もっとも、現在では大きなマーケットに規模が拡大しているミニバンもごく初期には1boxのバン(商用車)をベースに仕立てられていましたが、それなども前後が(比較的)対称な形状になっています。
ただし1boxの中でも明らかに前後対称を意識してデザインされたモデルがありました、それも国産車に。実はスズキ(当時はスズキ自動車工業)が69年にリリースした軽商用車で4代目となったL40型キャリイがそれで、イタルデザインを設立することになるジョルジェット・ジウジアーロが、ギア時代に手掛けた1台です。
フロントウインドウの傾斜角に合わせてリアウインドウも傾斜させているために、荷室容積が犠牲になってはいますが、まさに箱型のクルマが多い中でその存在感は抜け出ていて、“韋駄天キャリイ”のキャッチコピー通り、高度成長期の国内を縦横無尽に駆け回っていました。掲載している写真は、70年に大阪で開催された日本万国博覧会用に開発された電気自動車で、浜松市にあるスズキの企業博物館、スズキ歴史館に展示されています。
最初にも書いたように、これらのデザイン(とクルマそのもの)を認めるかどうかは一人一人の嗜好によるところが大きいでしょう。
今年2月に横浜のみなとみらい地区で行われたヒストリックカーイベントでは1台のヤヌスが出品されていました。実は国内で見かけるのはこれが初めてで、思わず仕事も忘れてクルマ談義をかわしていました。そしてそのオーナーさんがヤヌス(のデザイン)をとても気に入ってらっしゃることが伝わってきました。
そうなんです。一風変わっていようがどうであろうが、好きになったらそれでいい、というのがクルマとの付き合い方なんでしょうね。個人的にはリアにトランクを背負うBMWイセッタが気になります。