いまなお記憶に残る作品を彩った名車たち
名作と呼ばれる映画には存在感のある名脇役が不可欠で、クルマがその役割を果たすことも少なくない。当時を振り返って、「ストーリーはハッキリ思い出せないけど、出ていたクルマは鮮明に記憶が蘇る」という人も多いのではないだろうか。そこで今回は、ちょっと古めの洋画をメインに、作品を彩った名車たちを紹介したい。
バック・トゥ・ザ・フューチャー【DMC-12】
まずは王道中の王道として「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を。タイムマシンに改造され過去や未来を行き交うのは、かつてアメリカに存在したDMC(デロリアン・モーター・カンパニー)の「DMC-12」と呼ばれる車両だ。
続編を含む映画の世界的な大ヒットに加えて、ジョルジェット・ジウジアーロによる近未来的なデザイン、トータルで約8000台という生産数の少なさもあって、コレクターの間で高い人気を誇っている。
なおDMCはDMC-12を発売した翌年に倒産。世に送り出した市販車はこのモデルのみ。
ナイトライダー【トランザム】
次は1980年代に一世を風靡したドラマ「ナイトライダー」で知られる、ポンティアックの第3世代「トランザム」。科学の粋を結集した電子頭脳を搭載したという設定で、主人公マイケル・ナイトの心強い相棒として、凶悪な犯罪集団と闘うスーパーカーだった。
性能も凄まじくボディ全体が防弾であることはもちろん、最高速は300マイルで、ジャンプや片輪走行をこなし、会話どころか自らの意思で走行することも可能。アメリカのみならず日本でも熱心なファンによってレプリカが作られ、フロントに組み込まれた流れるライトは製品化されりもした。
特攻野郎Aチーム【バンデューラ】
同時代のドラマなら「特攻野郎Aチーム」で主要人物のひとり「コング」が駆る、GMCの「バンデューラ」を覚えている人も多いだろう。黒いボディに赤いストライプが印象的で、チームの移動によく使われていたほか、盗難に遭ったり破壊されるのもお約束だった。
アメリカン・グラフィティ【デュース・クーペ】
1973年に公開された青春映画「アメリカン・グラフィティ」では、主人公の兄貴分であるジョン・ミルナーの愛車、フォードの「デュース・クーペ」も印象的。V8エンジンが剥き出しになったルックスやエキゾーストノート、ドラッグレースの原型といえるシグナル・グランプリの描写など、国や時代を超えてクルマ好きの心をくすぐるシーンが盛り沢山だ。
テルマ&ルイーズ【サンダーバード】
女性ふたりの逃避行を描いた「テルマ&ルイーズ」で、彼女たちが乗っていたのは1966年式のフォード「サンダーバード」のコンバーチブル。楽しい旅行になるはずだった出発のシーンから悲劇的なラストまで、物語に寄り添う文字どおり“名脇役”として主人公たちに寄り添った。
グラン・トリノ【トリノ】
最後は少し新しめ、2008年に公開された作品で、車名がそのままタイトルになった「グラン・トリノ」を。監督および主演は当時78歳だったクリント・イーストウッドが務めており、グラン・トリノとは1972〜1976年に生産されたフォードの第3世代「トリノ」を指す。
ほかの作品と異なり劇中で走行するシーンはほとんどないが、物語の関わりや存在感はまさに主人公クラス。余談だがイーストウッド主演でクルマが印象的な作品には、興行的にイマイチだったものの「ピンク・キャデラック」という作品もある。