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なぜクルマは「バネ下重量」が大切なのか? ランニング時の「靴」と思えば納得!

サスペンションから下のことを「バネ下」という

 ハンドリングや足まわりについて語るとき「バネ下重量」という言葉が出てくる。この「バネ下」の“バネ”とはサスペンションのスプリングのことで、簡単にいうと、クルマをリフトで上げたときに垂れ下がってくる部分が「バネ下」となる。

 具体的にはタイヤ、ホイール、ハブ、ブレーキ、サスペンションアームなどの総重量が「バネ下重量」だと思えばいい。「下」があれば「上」もあるわけで、「バネ上」は上記「バネ下」を除いた、車体側のことを指す。

 ではなぜ「バネ下」と「バネ上」を分けて考える必要があるのかというと、それは「バネ下重量」が乗り心地やハンドリング、路面追従性に大きな影響を与えるからだ。「バネ下重量1kgの軽量化はバネ上10kgに相当する」といったフレーズを聞いたことがある方も多いのではないだろうか。

 タイヤやホイールといったバネ下部分は、路面の凹凸に合わせて上下する。このときこれらのパーツが重いと、そこに慣性が働き接地性が悪くなる。接地性が悪いということは、タイヤが地面にしっかり触れていない時間ができるということなので、運動性能に悪影響を与えるし、サスペンションの動きも悪くなるので、必然的に乗り心地も悪くなる。

 とくに乗り心地に関しては、バネ上とバネ下の重量比が大きいほどよくなるので、同じ乗り心地を得るのにバネ下を軽くするか、バネ上を重くするか、二つの道があるわけだが、同じ重量比にするときの効率が両者では大きく違う。

 例えばバネ上が1500kgでバネ下が40kgのクルマの場合、重量比は37.5。このクルマのバネ下を一輪につき1kg、四輪で4kg軽量化すると、重量比は41.6。逆にばね下重量が40kgのまま、重量比を41.6にするには、ばね上を1664kgにしなければならないわけで、164kgも重量増になるので、その効果は10倍どころではなくなる!

 もっとも、重量比だけで乗り心地が決まるわけではないので、「バネ下重量1kgの軽量化はバネ上10kgに相当する」というのは、機械工学的に正確な数字ではなく、あくまでイメージだと思った方がいい。

ばね下さえ軽ければ運動性能が上がるというものでもない

 ハンドリング性能に関しても、10倍とまではいえないが、体感できる大きな効果があるのは間違いない。モータースポーツやハイパフォーマンスカーが、鍛造ホイールやジュラルミンホイール、カーボンブレーキ(耐熱性もある)、軽量タイヤ、アルミサスアームなどを投入してばね下の軽量化を図るのはそのためだ。

 その効果については、よく鉄下駄とスポーツシューズに例えられる。同じ2kgの重さでも背中に背負って走るのと、昔流行ったパワーアンクルを足首に巻いて走るのとでは、走りやすさが決定的に違うというのはわかるだろう。ただし、人間だって軽ければワラジや裸足の方がいいわけではないように、クルマもばね下が軽ければ運動性能が上がるというものでもない。

 ばね下、とくにタイヤやホイールは剛性も重要な要素で、かつてサーキットでテストしたときは、軽さを最優先したホイールより、重量はそこまで軽くなくても、剛性の高いホイールを履いたときの方が、フィーリング、タイムともによかったというデータもある。

 そういう意味で、剛性と軽さはどちらも重要。ホイールを履き替えるときは、できるだけ軽いものを選びたいところだが、同時に剛性も重視し、バランスのとれたものを選ぶようにしよう。

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