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「オラ系」顔で人気を博した日産の「ライダーシリーズ」がほぼ消滅! キャラバンだけになった理由とは

ビレット風グリルが特徴的なカスタムモデル

 軽自動車からミニバン、ワンボックスカーまで、かつて日産車のさまざまなモデルに設定があったカスタムカーブランドの「Rider(ライダー)」。メッキ加工が施されたビレット風フロントグリルなどでイカつさと存在感を創り出し、ディーラーで買える日産カスタムカーの中でも人気のシリーズなのだが、現行モデルではNV350キャラバンのみにしか設定がないのが寂しいところ。そこで今回は特に人気を誇った1990年代後半から2000年初頭に登場したライダー・シリーズについて振り返ってみよう。

初代は1998年の「キューブ・ライダー」

 まずは、ライダーとはどんなブランドなのか簡単に説明しよう。製作を担当するのは、日産車のワークスカスタムカーや特装車などを手掛ける「オーテックジャパン」。ライダーの歴史は古く、初代は1998年に登場した「キューブ・ライダー(Z10型)」だ。

 当初から、現在のNV350キャラバンライダーにも通じるビレット風グリルを装備し、その個性的フォルムが大きな人気を得る。その後、ミニバンのセレナやエルグランド、SUVのエクストレイル、軽自動車のデイズやデイズルークスなど、さまざまな車種に設定が拡大される。

 いずれのモデルも存在感のあるフロントマスクやスタイリングが好評で、オーテックが製作する日産カスタムカーの代表的シリーズに成長。2016年にはエルグランドとセレナのライダーに、オーテック創立30周年を記念した特別仕様車も発売された。

 多くの日産車に設定されたイメージのあるライダーだが、じつは採用される車種には一定の基準もあった。オーテックジャパンの広報&デジタルマーケティンググループによると「ライダーのコンセプトに合致し、なおかつビレット風グリルと相性の良いデザインの車種をベース車として選定しました」とのこと。実際セダンやスポーツ&スペシャリティの車種には設定実績がないが、これは恐らくそれらモデルに設定すると、その特徴的なフロントグリルの個性が強すぎてしまうためだろう。

 またグリル形状は、キューブなどに投入した当初は1本1本が細めのデザインを採用していた。だが、その後は太めの形状にするなど、時代や流行、ベース車のフォルムといったその時々の変化に対応し、さまざまなデザインのグリルを採用している。

キューブ・ライダー(Z11型)

 ちなみに、フロント部に日産エンブレムを装備しない(いずれのモデルもリアには日産エンブレムを装着)のも歴代ライダーの特徴だが、それは「ベース車のイメージをより大きく変えるため(前出広報担当者)」といった理由だ。

ノート・ライダー(E11型)

「Rider」から「AUTECH」へ

 かつて大人気だったライダーに変化が起きたのは2017年。オーテックジャパンではこの年、プレミアムスポーティをコンセプトとし、社名と同じ名前の新ブランド「AUTECH(オーテック)」を設立する。翌2018年には、その第1弾として「セレナAUTECH」を発売すると同時に、セレナライダーを生産終了とした。

セレナAUTECH

デイズルークス・ライダー

 また、その後も「デイズ・ライダー」、「デイズ・ルークスライダー」、「キューブ・ライダー」、「エルグランド・ライダー」などが次々と生産中止に。

 一方でエルグランドやエクストレイル、新型のルークスなどは、セレナに続き新しくAUTECHを設定(ほかにノートやリーフもある)。前述のとおり、現在ライダーはNV350キャラバンのみの設定となっている。

キャラバン・ライダー(現行型)

 ライダーはAUTECHに入れ替わってしまうのだろうか。この点をオーテックは「AUTECHブランドとして訴求できる車種についてはAUTECHブランドに統合していくというのが、大きな方向性になっています」という。その背景には、近年メーカー直系のサブブランドが増加していることが挙げられる。

 オーテックジャパンは、1990年代からイチ早くディーラーで購入でき、保証も受けられる日産車のカスタムカーを手掛けてきた企業だが、最近では他メーカーでも同様のカスタムモデルが増え、多様化してきている。そこで、それらと差別化し、より魅力的な商品を提供するために、同社ではあえて人気があるライダーの設定車種を減らし、新しいAUTECHブランドへより注力する方針にしたのだ。

セレナ・オーテック(現行型)

 ただし、NV350キャラバンに関しては「ライダーとしてカスタムするほうが“似合っている”、“お客様の期待に沿っている”という車種」ということで、ライダーを継続。2020年9月には、ベースモデルの一部変更に合わせ、「キャラバン・ライダー」もエンジンの環境性能を向上させる改良が施されている。

キャラバン・ライダー(現行型)

「ライダー」が復活する時は来る?

 強面(こわもて)なオラオラ顔が一斉を風靡したライダー。今のクルマの多くが大型で特徴的なフロントグリルを採用するが、その先駆けともいえるモデルといえるだろう。では、なぜ設定車種が激減したか。これはあくまで私見だが、今のクルマにライダーのグリルはやや強烈すぎるのかもしれない。前述のブランド戦略も理由のひとつだろうが、デザイン自体が時代に合わなくなってきていることも、設定車種数に現れているのではないだろうか。

エルグランド・オーテック(現行型)

 もしそうだとしても、かつて人気だったデザインが、数年の時を経て再び人気となることは、クルマだけでなくファッションの世界などでもよくある。再びライダーの過激ともいえるイカつさがマッチする時代が訪れ、復活することに期待したい。

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