右へならえの風潮に一石の「i」も許容されず
三菱「i(アイ)」は、ボディサイズでいえば軽自動車枠いっぱいなので小ささを主張しているわけではない。しかし、やみくもに居住性を求める風潮に一石を投じたモデルといえるだろう。
重視されたのは、デザインと運転感覚だ。デビューは2006年で、当時の軽自動車のトレンドは「室内は広く、車体は四角く」になっていた。しかし、iはそんな風潮をあざ笑うかのように丸みを帯び、伸び伸びとした自由なデザイン。生活感がないのが自慢だった。
また、エンジンをキャビン後方に積むというチャレンジ(デザインはそんなレイアウトありき)もおこなわれたことで操縦感覚も独特だった。のちに電気自動車として発売された「i-MIEV」のベースでもある。
ただし、ニッチなマーケットであったことは否めない(そして他よりもちょっと高かった)。やはり、室内の狭さがユーザーには受け入れられなかったのだ。
パリでは生活文化へマッチングの「スマート」だが
輸入車にも「小さすぎるモデル」が存在する。「スマート・フォーツー」(当初の名称は「スマート」)だ。初代登場は1998年で、超小型車の先駆けといっていいだろう。後席はなく、全長は2500mm。日本では「スマートK」という軽自動車規格のタイプも販売された。
その後、2007年には2世代目に、2017年には3代目へとモデルチェンジしている。そんなスマート・フォーツーは、パリでは多く見かける。なぜなら、路上駐車する場所を見つけるのが難しいパリで、狭いスペースに収まる車体は絶大なメリットとなるからだ。普通のクルマは駐車できないスペースにも駐車できるように、フォーツーを選ぶのである。
しかし、日本も含めてパリ以外ではあまり見かけない。そこまで車体が小さい必要性がないからである。
車体が小さいことのメリットはあるが、そのメリットを求めている人が多いとは限らない。クルマ選びの際は、むしろ小ささと実用性のバランスが重要ということなのだろう。特に、小さくて高いクルマはなかなか難しい。