市販車ネーム「デルタ」は名ばかりのモンスター
WRCで1983年から導入されたグループB。過激なモンスターマシンが暴れまくり、人気を博したカテゴリーだったが、イタリアの名門ランチアは当初は「ラリー037」で参戦したものの、アウディのクワトロなど、フルタイム4WDが勃興してきたことから、リヤミッドシップの後輪駆動では次第に戦えなくなってしまう。時代の趨勢だけに仕方がない面もあったが、指を加えて見ているわけにはいかなかった。
最終兵器たるツインチャージャー
そこで作られたのが「デルタS4」だ。グループBの規定は非常にゆるく、ベース車両として認められるためには競技向けも含めて年間200台を作ればよかった。WRCで勝つためだけに誕生しただけに、市販車のデルタの名がつくとはいえ、シャーシも含めてまったく別物だった。
エンジンは「ラリー037」同様にアバルトが手掛けたもので、1759ccの直4をリヤミッドに縦置きしつつ、スーパーチャージャーとターボの二段過給を採用している。低回転をスーパーチャージャーが担当して、回転が上がってくるとターボに切り替わることで、ターボラグを解消するのが目的だった。 また、小排気量としたのは車両規定によって、車重の規定が有利になるためで、890kgしかなかったとされている。急造だったのも影響してか、デザインについてはフロントは当時のランチアのラリー車らしい顔つきだが、リヤまわりは寸詰まりでお世辞にもかっこいいとはいえないものだった。