多気筒が生んだロングノーズフォルムはまさに機能美
クルマにはさまざまな様式があって、そのなかでかっこいいとされるのが、ロングノーズ&ショートデッキで、スポーツカーによく採用される。このふたつは必ずしもセットというわけではないが、ロングノーズ、つまりボンネット部分を長くすると、デッキ(キャビン)は短くなるのが自然だ。
日本車ではフェアレディZが代表格だが、海外で人気を博するのはそもそも、高性能マシンで誕生したスタイルの影響も大きい。正確に言えば日本車は歴史が浅いため、ロングノーズのクルマが登場したのは比較的最近になってから、というのは仕方がないだろう。
では、海外でなぜ誕生したのかというと、ロングノーズにするしかなかったからという面もある。現在のように、シリンダー間をできるだけ薄くして小さなブロックにするということができなかった時代は大きくなりがちだったし、高性能にするには気筒数を増やすのが王道だった。今でこそ、多気筒というと直6が最大というイメージだが、戦前のスポーツモデルは直8が当たり前で、排気量も5リッターとかが普通。そうなると、エンジンは長くて大きく、ボンネット部分も長くなってしまうことになる。苦肉の策的な誕生だが、これが実際にかっこよかったことで、スポーツカーの定番として定着したのだろう。
ちなみにアウディの前身であるアウトウニオンの戦前に作ったF1は6リッターのV16という、これまた大きなエンジンを搭載していたが、フロントではなくリヤミッドシップとしたため、ショートノーズ、ロングテールという、お猿の電車みたいなスタイルでかっこよくはなかった。
このような経緯で、早い時期からロングノーズ&ショートデッキが誕生した海外では、当然のことながら、名車も多く登場した。そこで、海外の代表モデルを見てみよう。
ジャガーEタイプ
ジャガーといえば、Fタイプなど、現在もロングノーズの市販スポーツモデルを多くリリースしているが、そのルーツとなるのがEタイプだ。
Cタイプなどもあるが、競技向けの色合が濃く、市販メインというとEタイプになる。3.8リッターや4.2リッターの直6をフロントに積むことからロングノーズになっている面もあるが、実際にボンネットを開けてみるとキツキツではなく、見た目のよさからノーズを長くしているということが見て取れる。
フェラーリ デイトナ
ご存知のように、ミッドシップではないフェラーリは現在も存在して、それらはロングノーズ&ショートデッキだ。その代表格であり、名車とされてるいのがデイトナだろう。
デイトナとは、アメリカのデイトナ24時間レースのことで、1967年にフェラーリが1位から位まで独占したことにその名前は由来する。そもそもロングノーズはアメリカで好まれることから、デイトナのメインターゲットはアメリカ市場だった。4.4リッターのV12を縦に収めるだけにロングノーズになるのは当然で、ピニンファリーナの流麗なデザインと相まって、そのスタイルはほれぼれするほど。
ロータス スーパー7
ほぼエンジンルームで、人が乗るところは後方に少しだけ、という文法を守っているのが、ロータスのスーパー7。そしてそれを引き継いだ、ケーターハムなどだ。エンジン自体は大きくないものの、細長いシャーシの中に縦置きしつつ、補機を置いていくとロングノーズになってしまうというお手本みたいな感じだ。
シボレー カマロ
ロングノーズ&ショートデッキ好きのアメリカのなかでも真骨頂となるのが、カマロだ。初代には7リッターのV8も積まれていたし、イメージしにくいが4.1リッターの直6の設定もあった。巨大なエンジンを収めるのは大きなエンジンルームが必要と思いきや、余裕はあって、結局、ロングノーズというスタイルが好きなんだなと妙に納得させられる。
シボレー コルベット
こちらもカマロ同様のボンネットの長さ。エンジンのラインアップも含めて似たような感じだが、コルベットのほうがよりスポーティなイメージとなる。ちなみにショートデッキというが、アメ車の場合、ボディサイズが巨大な割にはかなり狭いのも特徴で、ここまで窮屈にしなくてもいいのに、と思うことしきり。車高が低いのも影響しているだろう。
ACコブラ
発祥の地ヨーロッパ、そしてロングノーズ好きのアメリカを見てきたが、折衷モデルも存在する。それがACコブラだ。