現SUVブームの礎を築いたかつての4WDブーム
現在、世界的に大きなマーケットを形成するSUV市場だが、日本の場合、その発端は1980年代。最初にブームを作ったのは、三菱パジェロに代表されるクロスカントリー4WDによる「RV(レクレーショナル・ビークル)」のカテゴリーだった。
パジェロの登場と「クロカン4WD」人気
現在も「高級4WD」として存在感を示すトヨタ・ランドクルーザーは別にして、1982年に商業車として登場したパジェロが口火を切り、日産サファリ、いすゞビッグホーンなどがRVのカテゴリーを形成。高い車高(1900mm前後)を持つ5人乗りのクロスカントリー4WD車、通称「クロカン4WD」で、タフでワイルド、大柄な外観の車両を街乗りで使うところが人気の原点となった。
何事もそうだが、普及して数が増えると、必ずその中から不備な点、不満な点が目立つようになる。クロカン4WDには、日常ユースで使うには少々大きすぎ、取り回し、使い勝手が良くないというデメリットがあった。「もう少し手軽に使えるRVはないか」という要求に応えたカテゴリーがSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)だった。
「サーフ」と「テラノ」
発端は1980年代に存在した初代トヨタ・ハイラックスサーフだったが、ブームに火をつけのは日産テラノだった。全高を1700mm前後に抑えて重心を下げ、スポーツ性を強調しながら、クロカン4WDと同じ4WD方式(後に2WD方式も追加)を採用し、行動力や走破力の高さを強調したRVとして若者を中心に支持された。
ハイラックスサーフは、1983年に登場したN60系が初代となり、ガソリン2リッター・4気筒とディーゼル2.4リッター・4気筒エンジンを用意。脱着可能なFRP製ルーフを持つアメリカ市場を見据えた車両企画で、1984年に日本市場に導入。
まだ日本でRVブームが起こる前の時代だったが、クロカン4WDとは異なる車両性格が新鮮だった。ハイラックスサーフの人気が本格化するのは2代目のN130系からだが、この間、ライバルとなる日産テラノが1986年に登場した。
テラノは、ハイラックスが採用したガソリン2リッター、ディーゼル2.4リッターのエンジンより格上となる3リッターのガソリンV6エンジン(VG30型)を搭載。上昇志向まっただ中の時代で、市場の人気を得ることに成功。この手法は、日産がワンボックスワゴンのキャラバンにVG30型を搭載して成功した前例があった。
パッケージは、ハイラックスサーフと同じミドルルーフ高のRV車で、駆動方式は4WDとFRの2タイプ。ディーゼル車に2.7リッターターボを用意し、エンジンでハイラックスを上回る仕様が特徴だった。
しかし、商品力でテラノに差をつけられていたハイラックスサーフは、1989年に2代目N130系へと進化して商品力をアップ。当初ガソリンエンジンは2リッターの3Y型だったが、1990年にテラノと同じ3リッター・V6エンジン(3VZ型)を投入。テラノに対して劣っていたエンジンの問題を解決。以後このミドルルーフRV市場でシェアを拡大していくことになる。
主役2台の消滅から現SUVブームへ
テラノはフルモデルチェンジを受けることなく、1995年いっぱいで国内販売を終了。
一方のハイラックサーフは、2009年まで4世代が作られ、車両の成長や市場の変化に合わせ、最後はランドクルーザープラドに統合されるかたちで発展的解消を遂げていた。
本格的なSUV市場の形成は2000年代に入ってからで、世界的にはBMW X5/X3やVWトゥアレグが登場して牽引車となり、現在にいたるSUVブームを形成するに至っている。