サーキット走行で身に付けておきたいマナー
一般道より安全といわれるサーキット。しかし事故が起きるときは起きる。その多くは追い越しの際に発生するといわれており、抜く側にも抜かれる側にも細心の注意が求められるのだ。安全かつお互いにスムーズな、抜き方および抜かれ方を知っておこう。
【抜かれる時】急いでラインを譲る必用ナシ
単独でのクラッシュなら別に構わないってワケじゃないけど、サーキットでもっとも避けたいのは相手を巻き込む事故。お互いに気まずい思いをするのは確実だし、ケガを負わせたりすれば自体はもっと深刻だ。相手を危険な目に遭わせない安全な「抜き方」と「抜かれ方」は、サーキットを走る誰もが身に付けるべきマナーといえる。
まずは「抜かれ方」の基本から説明しよう。初心者は自分が速くないことを自覚しており、過剰なほど他のクルマに道を譲る傾向が強い。後方に目を配るのは非常に良いことだが、譲る場所や方法によっては逆に危険なこともある。
よく見かけるのはベストなラインを空けるため、急にコースの右や左へ寄ったり動いたりブレーキを踏むパターン。コーナーでそんな操作をすればクルマは不安定になり、自分を追い越そうとしている相手だって戸惑ってしまう。なのでコーナーに対するアプローチに入ってからは、ラインを変えず後続車の動きをよくチェックし、立ち上がりの直線で先に行かせるのがセオリーだ。
もうひとつ注意したいのはウインカーの使い方。大半のドラテク本やスクールは「自分が左に寄るなら左ウインカー、右に寄るなら右ウインカーを出す」と教えているが、ごく稀に「コッチ側から抜いて欲しいと意思表示しよう」と、上記と正反対の説明をしている場合がある。
一般道で道を譲るときにそんな使い方は一般的にはせず、相手に意図が伝わりにくいし自分が操作を間違う可能性も少なくない。ローカルなルールとして定着しているサーキットがあれば別として、自分が寄る方向にウインカーを出したほうが絶対に安全なはずだ。
【抜く時】ストレートでの追い抜きが基本
次はリスクの少ない安全な「抜き方」について。前方に明らかに車速の低いクルマがいたら、ヘッドライトを点灯して自車の存在をアピールする。ただし真後ろに迫ったタイミングでは相手が驚き、急なライン変更やブレーキを誘発する可能性があるので、点灯させるタイミングは少し手前がベターだろう。
そのうえでコーナー進入やコーナリング中は無理に追い越さず、立ち上がってからのストレートで安全にパス。抜いてからルームミラー越しに手を挙げて挨拶すれば、マナー的にも非常にジェントルでカッコいい。
公式レースなら速いクルマや先にコーナーに入ったほうが優先されるものの、一般のサーキット走行会では「速い=優先」と考えるのはやめ、参加者みんなでコースを共有しているという基本に立ち返って欲しい。
ハザードランプの使い方
最後にハザードランプについても触れておきたい。一般道であれば道を譲ってもらったり、割り込ませてもらったときの「御礼」に点滅させるのが慣例化しているが、サーキットでは車両に何らかの不具合があって、通常の走行ライン(基本的なアウト・イン・アウト)を走らずスロー走行のときに使用する。
抜いた側がお礼の意味で使うと誤解される危険性があるし、譲る側が使えば相手は「コーナーもアウト側を走るはず」と考えてしまう。ひとつ間違えば両者の走行ラインが交錯して、大きなクラッシュに繋がりかねないので、追い抜きに関わる意思表示はウインカーだけで行ったほうがリスクは少ないだろう。