本格オフロードを切り抜けるための救出アイテム
四駆という頼もしいクルマを愛車にした瞬間、なんだか自分の行動範囲が一気に広がった気分になる。せっかく四駆に乗っているんだったら未舗装路、つまりオフロードを走って楽しみたいと思う人も多いのではないだろうか。しかし、いくら四駆だからといって油断は絶対NG。そこで今回は、本格的な悪路で役立つレスキューアイテム紹介しよう。
無茶は厳禁!「そなえよつねに」
クルマの性能を過信してか、いきなり無茶をすればスタックや横転、滑落してしまうことだってあり得る。復帰までに数時間を費やし、せっかくの休日を台無しにしてしまった、という話も珍しくない。特に初心者は一人で行かず、そのフィールドを知り尽くしたベテランと2台以上で行くのが鉄則だ。
トランスファーの切り替えタイミングやタイヤの空気圧調整、ドラポジやドラテク、難易度の高いポイントは一度歩いてラインを確認したり、無理だと感じたら迂回したりすることも大切だ。安全にオフロードを楽しむためには色々な準備や知識、心構えが必要だが、例えこれらが完璧だったとしても不測の事態が起こることもある。
しかし「レスキューアイテム」があれば、そんな時でもいち早く復帰できたり、被害を最小限に抑え何事もなかったように再スタートできるかもしれない。逆にトラブっている車両に出くわしたら手を差し伸べることもできる。オフローディングは自然が相手であり、危険と隣り合わせであることを忘れてはならない。だからこそ、万が一の事態に備えておく必要があるのだ。
とはいえ、世の中にはたくさんのレスキューアイテムがあり、「●●を持っていけば間違いない」という都合の良いモノはない。四駆乗りたちは走るフィールドや気候、愛車の仕様に合わせて厳選したアイテムを積んで出かけている。
今回は、レスキューも競技の一部になっているオフロードレース「XCT-Dual(クロスカントリートライアル×デュアルの略)」で実際に使われている装備を中心に紹介するので、ぜひ参考にしてほしい。
1)必ず携行したい「牽引ロープ」
例えば、ぬかるみなどにはまって立ち往生(スタック)した時の脱出、あるいは故障して自走できない場合に安全な場所まで他のクルマに牽引してもらう時などに必要な牽引ロープ。必ず1本は常備しておきたいアイテムだ。
ワイヤーロープやリカバリーストラップ(ベルトタイプ)、ソフトカーロープ (伸縮タイプ)があるが、XCT-Dualでは、万が一、牽引ロープが切れた場合の安全性を考えてワイヤーロープの使用を禁止している。リカバリーストラップは伸縮性がないベルトタイプ。ソフトカーロープ は牽引時に伸縮する為、引っ張りはじめる時の衝撃緩和や牽引時に車間距離が詰まっても縮むので、ロープが地面を擦るのを避けられるというメリットがある。比較的入手しやすく扱いやすいので愛用者も多い。
どのタイプにしても十分な破断張力があるか、牽引フック付きの場合はその強度にも注意したい。また、自分がどんな長さのものを持っているか頭にいれておけば、実際にレスキューするときにどこまで自分のクルマを近づけたら良いか瞬時に判断できる。
2)牽引ロープとセットで用意すべき「牽引フック」
牽引ロープの両端にあらかじめフックがあれば無理して別途用意する必要はないが、もしないのであれば必須となる。オフローダーは主にU字シャックルやS字フックを複数持っていることが多い。
横方向での強度面、可動域などにおいて万能なのがU字シャックル。一方スピーディーに着脱できるので競技向きなのがS字フックだ。牽引ロープの長さが足りない場合、2本の牽引ロープを連結する際にも使える。
3)愛車が引っ張られる準備も忘れずに
四駆に限らずどのクルマにも車両側に牽引フックが装備されているので、まずは愛車の牽引フックの場所を確認しておこう。直接フックをかけるタイプや使用する時だけ差し込んだりボルトで装着するタイプがある。場所がわからなければ取扱説明書に記載されているはずだ。
ちなみに、車両の前後左右のかけやすい位置に牽引フックがあるとレスキューしやすく、「ここに牽引フックがあればラクにレスキューできたのになぁ……」という状況は結構あるものだ。
車種によっては各アフターパーツメーカーから車種専用設計の牽引フックがリリースされている。泥や雪で下まわりが埋もれてしまった場合でもすぐに場所がわかるようにレッドやイエロー、オレンジなどの目立つカラーで塗装しているオフローダーが多い。あくまでも実用的な目的だが、愛車のアイキャッチ効果も狙えるので好きなカラーに塗装するのも良いかもしれない。
ヒッチメンバーをアンカーポイントにできるブラケットも多く出回っているので、ヒッチ装着車両には選択肢のひとつになる。
4)頻繁に激しいオフロードを走るなら「ウインチ」も
電動ウインチがあればさらに安心感が増す。XCT-Dualでも装着率が高く、あればスピーディかつラクに脱出できるケースが多い。また、木などをアンカーにすれば他車に助けてもらわなくても自力で難所をクリアできる。
以前はランドクルーザーやサファリなどの本格クロカン四駆には純正オプションとして電動ウインチが用意されていたが、最近はほとんど見かけなくなった。今から愛車に装着するのであれば、ウインチ対応バンパーに変更して社外品の電動ウインチを購入するなど、コストも手間もかかるのが難点だ。
スピード勝負のXCT-Dualの現場では見かけないが、手動のウインチも存在する。「ハンドウインチ」や「チルホール」と呼ばるものだ。もちろん電動ウインチよりも安価なので入手しやすいし、持ち運びも容易。特にジムニーなどの小型車には有効なアイテムだ。
電動ウインチはフロントに装着するのが一般的だが、リヤにも装着したり、ヒッチメンバーに装着可能な脱着式ウインチマウントを使用して状況に応じて前後どちらにも装着できるよう工夫している場合もある。
大抵の場合、デフォルトのウインチロープは金属ワイヤーロープだが、XCT-Dualではファイバー製ロープへの交換が必須。これは破断したロープが暴れた時に周囲への被害を最小限にするためだ。ワイヤーロープだけでもかなりの重量になるので軽量化としても効果的。アウトドア趣味や個人でのクロカンを楽しむ際には、使いやすいファイバー製ロープをオススメしたい。
5)ウインチと一緒に用意したいアイテム
ウインチを使用するときは「ダブルライン」という方法で使うと牽引力が2倍になり、装置の負荷を減らす事ができる。また牽引方向を変えることもできるスナッチブロック(滑車)もあると尚良い。
ウインチアンカーポイントとして木を使用する場合、ワイヤーロープを直接巻きつけると木を傷つけてしまうので、「ツリープロテクター」を必ず使用すること。樹木は樹皮の下部層で大地から水を吸い上げている。したがって木にロープを食い込ませてダメージを与えるのは絶対に避けるべきだ。自然で遊ばせてもらっているオフローダーとしての最低限のマナーだ。もちろんXCT-Dualでも必須とされている。
オフロードに行くときは万全の装備で挑むべし!
今回はXCT-Dualで使用頻度の高いアイテムを中心に紹介したが、例えばスコップやスノー&サンドラダー、ハイリフトジャッキなど、ほかにも色々なレスキューアイテムがある。愛車や走るシーンに適したアイテムをチョイスしよう。
また、今回紹介したアイテムがセットになったものも販売されているので、このようなものをベースに少しずつ揃えていくのも良いだろう。
最近は見た目の好みや後方視認性を優先して背面タイヤを外して走っている(車内に積まずに)四駆も見かけるが、せっかく四駆に乗っているのにパンクして立ち往生するのはみっともないし、後続車に迷惑をかけてしまうかもしれない。オフロードに行く時は、いつどんな事が起こるかわからない。とにかく万全な装備を心がけてほしい。
また筆者の場合は、車載工具+αとして厳選した工具やエマージェンシーキットはもちろん、万が一トラブルが発生した場合に山中で一泊できるようにレインウェア、防寒具、タオル、寝袋、水、非常食、コンパクトバーナー、LEDランタン、ヘッドライト、アマチュア無線(免許必須)、モバイルバッテリーなどを、ダッフルバッグ等にまとめて積んで出かけるようにしている。スペアパーツや油脂類、補修に必要なアイテム(テープ類やタイラップ各種)などもあれば、さらに安心だ。
「そなえよつねに(Be Prepared)」。これはボーイスカウト経験がある人なら必ず知っている言葉だが、安全にオフロードを楽しみ、最高の休日を過ごすために、四駆乗りの皆さんにもぜひ意識してほしい。
[取材協力]
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