初代コペンカスタムは「レストアありき」の時代へ
かつての880コペンのカスタムを振り返ってみると、関連ブランドからたくさんリリースされているエアロパーツを装着して、自分好みにエクステリアを着飾るというのが主流であった。大小さまざまなボディパーツが数多く販売されていて、デザインもアフターパーツならではの大胆なものから、手軽に装着できる付け足し系のアクセサリーまで、何でもそろえることができた。
当時の初代コペンオーナーたちは競うように個性を追求し、テッパンのレーシーやスーパーカー系はもちろん、VIP、ユーロ、アメリカン、痛車、レトロ&ヴィンテージなどなど、どんなスタイルにも立派に仕立て上げた。10人居れば10通りのカスタムスタイルがあって、まさにコペンオーナーの数だけコダワリが感じられ、本当に見ているだけでも楽しめた。
そんな初代880コペンだったのだが、いまはどうか? エアロ全盛の時代からは、かなり様変わりしているように思う。それを解き明かすと、ユーザーのお金の掛け方が、以前と比べると随分と変わってきたことが原因とされている。ズバリ、880コペンにもついに「レストア」の精神が台頭してきたのだ。しかも、本格的なレストアが。
すなわち、880コペンにかける情熱や愛おしさは変わらないが、コペンカスタムをやり尽くした結果、まわりまわって、純正(新車)に近い状態に復元し、これからもまだまだ大切に初代コペンに乗り続けたいというマインドがトレンドになりつつあるようなのだ。エアロパーツで見た目をドレスアップするよりも、ボディやエンジン、サスペンションをリフレッシュすることに、カスタム資金は流れているというのが最近の実情。
880に詳しいコペン専門店によると「実はエンジンやタービンも含め、補修用パーツとして、ほぼすべてのパーツがいまでも新品で購入できます」と教えてくれた。であれば、理論上は“箱”さえあれば、限りなく新車に近い880コペンをつくることも可能なのだ。これは初代コペンファンにとっては、この上ない朗報と言えよう。
レストアによって蘇った880コペンは、当時の新車価格以上に費用がかかるかもしれない。だがこの先も10年以上大切に乗るゾという「覚悟」が決まっていれば、それに見合う十分な価値があるのではないだろうか? “箱”について言えば、レストア時に丸裸(ドンガラ)になったシャシーやフレームに対して、ロールケージ追加やフルスポット増し溶接を施せば、新車以上に強度を持たせることもできる。オープンカーにとってウイークポイントになるのはボディ剛性だと言われているのだが、現行の400コペンはそこが大幅に改善されているのに対し、880はボディ剛性が不足気味。
もし悩めるものなら、200万円以上かけてフルレストアするか、180万円の極上アルティメットエディションの中古車を買うか、とてもオモシロイ選択になりそうだ。仮にレストアするにしても、大好きな880コペンを“箱”からつくるというプランに、とてつもないロマンを感じられるのは言うまでもないだろう。
現行「LA400」と初代「L880」はどちらが速いか
ここまで880コペンの動力性能にあまり触れて来なかったので、最後にそのあたりの“速さ”の話を少し。
どちらが速いかは後にして、純正状態での基本性能は400コペンのほうが圧倒的に上。ダイハツの新型コペン開発者の話を要約すると「880コペンのダメなところを徹底的に洗い直し、マツダ・ロードスターを喰うべく超真剣に作った」とのこと。
その目標に対して400コペンに与えられた「Dフレーム」という骨格構造は、初代880コペンと比較してボディ上下曲げ剛性で3倍、ボディねじれ剛性で1.5倍という大幅な剛性アップが図られている。おそらく、排気量660ccの自主規制64馬力では明らかにオーバースペック。400コペンが発売されてまもなくは、880とのボディ剛性との違いに大勢が驚愕し、コペンチューナーからも「ボディ補強は不要だ」という声が挙がったほど優れている。
話を戻して新・旧コペンはどちらが速いか。現在、残された記録でいうと、880コペンの方が速い。しかも圧倒的に。もっと言うなれば、軽自動車のなかでイチバン速いのが880コペンなのだ。ただしこれは、400コペンの「D-Frame」的な、ボディ剛性アップを880コペンに施していることが前提。先のレストアのくだりで「“箱”から作る」と申し上げたのがそれだ。
400コペンのボディ剛性アップのノウハウを880コペンにフィードバックし、歴史あるJB-DETエンジンチューニングを合体させることが、現在のところ最速のパッケージになっている。いずれにしても880コペンが軽自動車最速であることは事実。880コペンがいまもなお大勢から愛されている理由は、そんなところにもあるのかもしれない。スポーツカーは速いほうがカッコいいに決まっているからだ。