2021年の干支は丑 では牛をエンブレムとするクルマは?
新たな年、2021年は丑年です。最近では元号が複雑がられる機運もあり、干支に至っては「分かんな~い」という方も増えてきたようですが、年賀状の多くには牛のイラストが踊っていました。そしてクルマ好きの中には、その牛にかかわるエンブレムをもじったイラストを描く人も少なくありません。そう言えば、モータースポーツ業界屈指のヒストリアンである友人から戌年…長い付き合いでいつの戌年だったかは忘れてしまいましたが…にもらった年賀状にはグッドイヤーのエンブレムが大きく描かれていました。しかしよく見るとGOOD YEARのロゴがDOG YEARと置き換えられていて、洒落を嗜む彼らしい“作品”でした。流石です。
ランボルギーニのエンブレムの由来
ところで丑年ということで、今年は牛のエンブレムを持ったクルマが活躍することになるでしょうか? 牛のエンブレムといえば、まず思い起こされるのがランボルギーニ。そのエンブレムは猛る水牛をデザイン化しておりファイティング・ブルとも呼ばれています。
ただしその辺りは都市伝説というのか、両社の対決を煽るべく脚色されていて、実際には1916年生まれのフェルッチオの誕生日が4月28日で牡牛座だったことからエンブレムのデザインに採用された、とする説が現在では一般的となっているようです。自分の生まれ星座からエンブレムをデザインすることだって十分にロマンチックだと思うのですが、それでもエンツォが、トラクターの生産・販売で財を成したフェルッチオを“成金”と見立てて門前払いし、それで奮起したフェルッチオが、生涯を懸けて打倒フェラーリを実践していった。その証拠がファイティング・ブルだ、とした方が、話としては盛り上がるので、個人的にはこちらの解釈のほうが好きなのですが、どうでしょうね。
それはともかく、ランボルギーニのファイティング・ブルは今や、フェラーリのプランシングホースと同様に、広く知られたエンブレムで、ここで紹介したそれに纏わるエピソードも、熱狂的なファンでなくとも、クルマ好きには広く知られたストーリーとなっています。
実は牛の仲間である「羊」のエンブレム
そこで今回は、少し穿った見方で牛のエンブレムを探してみました。と言いつつ、実際に探してみると多くはないんですね、牛のエンブレムって。そもそも牛の定義として水牛は納得ですが、羊もカモシカも、実は牛の仲間だって知ってました? そしてそこまで範囲を広げてくるといくつか候補が浮かんできました。先ずはラム(Ram)。もともとはクライスラーのダッジから独立したブランドでしたが、現在はフィアット・クライスラー・オートモビルズ(FCA)のブランドの一つでピックアップに特化した商用車ブランドとなっています。
かつてはダッジ全体で使用していた、雄羊(Ram)をデザインしたエンブレムは、現在ではラム専用となっています。ちなみに雄羊はRamで羊肉(Lamp)も羊の尻肉(Rump)も綴りは違うもののすべてラムです。ますます紛らわしくなってきますね。
続いては国産車の例を紹介しましょう。69年に登場した2代目パブリカ(P30系)の後期モデル(P50系)のノーズ中央にはカモシカをデザインしたエンブレムが貼り付けられていました。これはエンブレムではないのですがスズキ・ジムニーには「シエラ・エルク」というモデルがあり、リアに背負ったスペアタイヤのカバーにエルク(Elk)をデザインしたステッカーが貼られていました。
また日産シルビア(3代目)の兄弟車として79年に登場した日産ガゼールは、TVドラマ『西部警察』に登場した際にオープンモデルにコンバートされるとともに、ボンネットにはガゼル(Gazelle)をデザインしたデカールが貼られていました。
さらに、これは乗用車ではなく商用車なのですが、日産が70年代末から80年代にかけて販売していたクルマに日産バイソンというキャブオーバートラックがありました。バイソン(野牛。Bison)に因んだ車名でしたが、こちらはバイソンをデザインしたエンブレムやステッカーは貼られていませんでした。
また同時期に川崎重工業が販売していたデュアルパーパスタイプの250TRが愛称として“バイソン”を名乗っていましたが、商標登録の関係から、正式名称でバイソンを名乗ることはありませんでした。しかし、羊が牛の仲間だとは知りませんでした。あと7年経って未年(ひつじどし)となった時にはまたもう一度、今回のようにランボルギーニからバイクのバイソンまでを紹介することになるのでしょうか、干支の文化とクルマの文化、廃れて欲しくないですねぇ。