地名から浮かぶイメージをクルマの名前に
クルマの名前はその車種のイメージを決定づける大切なもの。グローバルな車種であれば英語やその他の言語の意味を持った車名であったり、逆に日本語的な響きを持たせて日本車であることをアピールしたり、はたまたアルファベットと記号で共通点を持たせたりとさまざまだ。
そんな幅広いクルマの名前の中でも意外と多いのが、地名が入ったものだ。車名ではなくグレード名に使われていたものもあるが、その名前はどんな由来があって付けられたのかも含め、振り返ってみたい。
ダットサン(日産)・ サニーカリフォルニア
1977年に登場した4代目サニーのステーションワゴン版として、1979年に登場したサニーカリフォルニア。名前の由来は言うまでもなくアメリカのカリフォルニア州であり、同州の自由で楽し気なイメージを重ねてリリースされたもので、カタログにはサーファーをイメージしたカットも使われていた。
そんなサニーカリフォルニアには、古き良きアメ車のステーションワゴンに装着されていた、ボディサイドのウッドパネルを模したデカールを装着した仕様も存在しており、カリフォルニアの名前とマッチしていたこともあって人気を博したのである。
その後4世代続いたサニーカリフォルニアは、兄弟車関係にあったADワゴンと統合されてウイングロードへと生まれ変わったが、最終型のサニーカリフォルニアには「サンホゼ」というカリフォルニア州の都市の名前が付けられたグレードも存在していた。
プリムス・サッポロ
クライスラーが1928年に立ち上げた大衆車向けブランドであるプリムス。そもそもこのプリムスというブランド名もアメリカのマサチューセッツ州にある町が由来となっているのだが、そのプリムスブランドから1976年にリリースされたコンパクト2ドアクーペがサッポロである。
このサッポロは言うまでもなく日本の北海道の県庁所在地である札幌から採られており、1972年に札幌オリンピックが開催されて世界的に名前が知られたことから名付けられた。
しかし、なぜアメリカのプリムスが販売する車両に日本の都市の名前が付けられていたのかというと、実はこのクルマ、三菱 ギャランλのOEMモデルなのである。そのため、アメ車感満載の彫りの深いフロントマスクも太いリアピラーも実はベース車のままなのだ。
スバル・トライベッカ
日本ではあまり馴染みのないトライベッカだが、これはスバルが海外向けに生産・販売をしていたクロスオーバーSUVだ。
当時のスバルのラインナップでは最大のボディを持ち、3列シート7人乗り仕様も設定されていたトライベッカは、前期型は日本のR2によく似たスプレッドウィングスグリルを持ったルックスだったが、イマイチ評判がよくなかったのか2008年モデルでは大きくフェイスチェンジが行われている。
そんなトライベッカの車名は、ニューヨークのキャナル通り南側の地域を指す「Triangle Below Canal Street」の頭文字を取った略称である「TRIBECA」から採られており、最先端の流行を生み出すこの地域のようなイメージを重ね合わせて付けられていた。
パルサー・ミラノX1
今は亡き日産のコンパクトカーであったパルサー。その2代目モデルがマイナーチェンジを受けた1984年に突如として設定されたグレードが「ミラノX1」だ。
そもそもパルサーは初代モデルが登場したときから「パルサー・ヨーロッパ」というコピーで欧州車を仮想ライバルとしてきた車種であり、2代目からは北米市場にはサニー、欧州市場にはパルサーと棲み分けがなされていただけにイタリアの都市名が付けられても不思議ではない。
しかし、このミラノにはもっと深い理由があった。それは、当時日産とアルファロメオが合弁会社を立ち上げ、N12パルサーをベースとした「アルファロメオ・アルナ」という車種を前年の83年にリリースしたことがきっかけであり、ミラノのグレード名はN13型にも引き継がれるほどの人気となった。
一方のアルナ自体は、日本の退屈なデザインのボディにアルファロメオの信頼性に欠けるエンジンを搭載したモデルと揶揄され、わずか4年で姿を消してしまった。