オーバーホールで元の機能・性能を取り戻す
旧車を維持していると必ず直面するのが部品の問題だ。メーカーやモデル、年式によっては消耗品すらも供給がストップしてしまい、新品が手に入らなくなってしまうことは珍しくない。また、消耗品でないにしても長年使っていると、摩耗や破損などによって交換しなくてはならない部品も出てくる。もちろんこれも生産中止になっている可能性があって、マイナー車ほど厳しい状況となることが多い。
そのようなときによく耳にするのが「無い物は作る」という言葉だが、実際は費用や手間を考えると非現実的だし、そう簡単に作れるものではない。鉄板から叩いて作れるボディパネルや脱泡さえなんとかクリアできれば可能なウインカーレンズ程度だ。あとは、数十枚でペイできるガラスというのもある。
しかし、なかにはオーバーホールすれば機能が戻るものが結構あるのだ。今回はオーバーホールできるパーツについて紹介しよう。
【ブレーキ&クラッチの油圧まわり】
カップと呼ばれる内部のゴムパーツすらメーカーから出ないこともあるが、社外品もあるし、他車流用も利きやすいのがこちら。内部が腐食しているとやっかいだが、この場合も流用などでなんとかなる。
【ブレーキのパッド&シューやクラッチディスク】
こちらは鉄板に摩擦材が貼ってあるだけなので、専門の業者に頼めば貼り替えてくれる。さらにはバッドは大きいものを用意して、削ってサイズを合わせるという猛者もいる。
【キャブレター】
オーバーホールできるパーツの代表格のひとつがこちら。正確に言うと、バラバラに簡単にできて、パッキンやジェット類を交換してオーバーホールできるように作られていると言える。ただ、古いものだと内部のパーツを交換するだけでは性能は完全に元に戻らず、専門の業者にお願いして加工して、本体のゆがみなどを取る必要があることもある。シビアな作りではあるので、整備のプロに言わせると「オーバーホールには限界があるのも事実で、新品が高くても手に入るならそっちのほうが良い」という声もある。
【エンジン】
エンジン内部で消耗するところはピストン、シリンダー、ベアリング、バルブまわり、カムシャフトなど。ピストンはサイズで追って行けば流用できるものが見つかることもあるし、輸出されていたら、海外で見つかることもある。シリンダーが減った場合はスリーブを入れ直せばOKだっりと、昔からの加工技術を駆使すればオーバーホールは可能。業者自体は激減しているが、まだ各地に残っているので困りはしない。
【ミッション】
スムーズな入りに関係するシンクロと呼ばれるパーツは作れないことはない。ただ、ギアが欠けたり摩耗しているとオーバーホールは難しくなってしまい、だましだまし乗ることになるので、要注意部位だったりする。
【デフ】
FR車のリヤについているものの場合、仕組みはシンプルで、ギアのアタリの調整もできるし、ベアリングやオイルシールも汎用品が使えたりするので、比較的簡単にオーバーホールできる。
【ドライブシャフト&プロペラシャフト】
ジョイントは汎用品が使えることが多いし、ブーツも同様で、簡単にオーバーホールできる部品だ。
【ラジエーター】
ラジエーターは規格品まではいかないものの、形は似ているし、素材はみんな同じ。現物合わせでオーバーホールしてくれる専門業者があるので、そこにお願いすれば対応してくれる。
【発電機&スターター】
どちらも仕組みとしてはモーターなので、シンプルな構造をしている。コアの巻き直しやブラシと呼ばれる端子などを新品にすればいいので、比較的簡単にオーバーホールできるパーツではある。
【シート&内張り】
どちらも芯に対して布やビニールレザーを貼って作られているので、バラバラにして新品に入れ替えたり、貼り直せばヘタったものでもオーバーホール可能。レザーの場合、表面が劣化しているだけなら、塗り直せば良い。老舗の業者のなかには当時の生地をストックしているところもある。
【ホイール】
亀裂が入ったり、こすって欠けている場合も溶接で埋めて直すことが可能だ。塗装自体も粉体塗装と呼ばれる特殊なものを施すことができる。
【点火系】
全体をすべてオーバーホールはできないのが痛いところ。できるのはディストリビューターと呼ばれる、各気筒に点火の電気を配分している部品ぐらい。ただ、オリジナルにこだわらなけば何とかなる部分でもある。
【メーター】
メーターは専門のオーバーホール業者があるので、盤面の補修から内部の修理、表示の調整などを行なってもらえる。新品同様にすることが可能だ
【メッキパーツ】
プロのメッキ業者は業販がメインだが、ショップや個人からの少量を受けてくれるところもある。パンパーなどの大物からネジまで、輝きが取り戻せる。
【その他】
機能部品だとウォーターポンブや配線。車内であればウッドパネルやラジオなどもオーバーホールはできる。ただ、今後は職人の高齢化などもあって、オーバーホールできなくなることも考えられるので、旧車の基本である「あとでできると思うな」を肝に命じて、依頼するなら早めにしたほうが良い。