レースも知るラリーストが語るラリードラテクの真髄
サーキットを舞台に数台のマシンで着順を競うレース競技に対して、ラリー競技は封鎖された一般道を舞台に単走のアタックでタイムトライアルを展開。同じモータースポーツでも、シチュエーションも競技形式も異なる両カテゴリーだが、ドライビングにおけるテクニックも異なってくるのだろうか? スバルWRXを武器に2020年の全日本ラリー選手権で最高峰のJN1クラスでチャンピオンを獲得したほか、2019年には86/BRZレースに参戦した新井大輝選手に聞いてみたところ、次のように答えてくれた。
ラリーは常に状況フィードバック制御
「ラリー競技だけのドライビングテクニックはいっぱいありますよ。サーキットもターマックラリーも同じ舗装の路面ですが、ラリーのスペシャルステージは窪みや排水口があるので、それを利用しながら、ひっかけるような感じで走ることが多い。イメージ的には漫画の“イニシャルD”に出てきた“溝落とし”に近いんですけど、落としすぎるとアンダーガードに当たってクルマが浮くので、溝を使うけど完全に内輪が浮かないレベルで使うといった感じですね」と新井選手は語る。
さらにブレーキングに関しても「レースはシフトダウンをしながらブレーキで車速を落としますが、ラリーはブレーキが先です。それに、86/BRZレースはABSに入らせないようにブレーキングしますが、ラリーではロックする限界までブレーキを踏んで、ロックしたらブレーキをリリース。“人間ABS”の状態で走っています」とのことだ。
当然、グラベルラリーでは独特のアクセルワークが必要になってくるようで、新井選手は「ターマックはブレーキを踏んで等荷重になった瞬間にアクセルを踏んでデフを利かせるんですけど、グラベルはブレーキとアクセルをオーバーラップさせて常に駆動をさせている状態です。つまり、グラベルはニュートラルというかパーシャルの状態がないので、大きく違います」とのこと。
ちなみに「86/BRZレースに出たことで、ステアリングの切り方が勉強になりました。ラリーはクルマの動きに合わせてステアリングを切り込むので瞬間的なスリップアングルはそこまでつけないんですけど、レースは瞬間的に切り込むことがある。サーキットは広いからできるんでしょうけど、それをやったほうが速いコーナーもありました」とのこと。さらに新井選手によれば「ラリーは路面を見ながらドライビングするフィードバック制御なら、レースは予測が先にあるオープン制御。ドライビングのシステムが違います」と付け加えた。