ミニバンでも走りが楽しめる
「運転が楽しくないクルマなんて買いたくない!」と思いつつも、家族の事情などで3列シートを備えるミニバンの購入を迫られる人も少なくないだろう。
しかし、あきらめるのは早い。3列シートの多人数乗用車にも、胸のすくようなハンドリングで走りが楽しめるモデルが存在するのだ。今日は中古でしか買えないモデルから新車購入できる現行車まで、そんな「走りが楽しいミニバン」を紹介しよう。
走りはスポーツカーのような奥深さ「オデッセイ」
ハンドリングのいいモデルとして誰もがイメージするのは、ホンダ「オデッセイ」ではないだろうか。2003年にデビューした3代目オデッセイには誰もが驚いた。ミニバンながら全高を1550mmと“セダン+α”の高さに抑えたのだ。
このミニバンとして常識外れのこの全高の理由のひとつは「ミニバン対応ではない機械式立体駐車場への入庫のため」だったが、それだけにとどまらなかった。低い重心が走行性能に好影響をもたらし、ミニバンらしからぬ爽快な走りを実現したのだ。
なかでもスポーツグレードの「アブソルート」は専用のサスペンションでハンドリングを鍛え上げたのに加え、標準タイプの160psエンジン+CVTでなはなく200psエンジンに5速ATを組み合わせるなどパワートレインも専用設計(エンジン排気量は2.4L)。まるでスポーツカーのようなハンドリングが味わえるモデルとして、ミニバン界に衝撃を与えた。
2008年にデビューした4代目モデルもキープコンセプトで、3代目に引き続き奥深い走りを楽しめるミニバンとして2013年まで販売。背の低いオデッセイのインパクトは、とにかく大きなものだった。
スポーティグレードの「ストリーム」&「ジェイド」
オデッセイと同様に背が低い設計ながら、ひとまわりサイズが小さいのが2006年に登場した2代目ホンダ「ストリーム」だ。全高はもっとも低いモデルが1545mmで、プロポーションはミニバンというよりステーションワゴン。強化した専用サスペンションを組みあわせたスポーティグレードの「RSZ」も用意され、2014年まで販売された。エンジン排気量は1.8Lと2.0Lだ。
そんなストリームの後継モデルともいえるのが、2015年にデビューした「ジェイド」。全長はストリームに対して10㎝弱伸びたものの、全高は1535~1540mmとさらに低くスタイリッシュに。ミニバンというよりは「補助的な3列目を備えたワゴン」といったパッケージングだが、パワートレインは1.5Lターボだけでなく、1.5L自然吸気エンジンにモーターを加えたハイブリッドも選べたのが新しい。
初代シビックから受け継がれるホンダにとって伝統的なスポーティグレードである「RS」も設定されていたが、2020年夏に販売を終了している。
まさに“人馬一体”の「プレマシー」
なかには「ミニバンはやはりスライドドアに限る」という人もいるだろう。もちろん、そんなユーザ-に最適な“走りのミニバン”も存在する。中古車で選ぶなら、筆頭候補はマツダ「プレマシー」だ。
2010年に発売された3代目プレマシーの走りは驚くべき水準だった。決してシャープではないが、ハンドル操作に対して曲がり方が素直だしロールが的確。マツダが提唱する“人馬一体”を具現化したかのごとく、ドライバーの思った通りに気持ちよく曲がっていく操縦性をいまだに「マツダの最高傑作といえるハンドリング」と評価する人がいるほどだ。ミニバンにもかかわらず、メディア向けの試乗会がワインディングロードを舞台におこなわれたのもマツダの走りに対する自信の表れだった。
おすすめは、マツダの次世代技術である「スカイアクティブテクノロジー」のエンジンとトランスミッションへアップデートされた2013年以降のFFモデル。フィーリングが向上した新開発エンジンを採用するともにATが従来の5速から6速化され、パワートレインが大幅に洗練されたからだ。
高車高の3列シートでも「新時代もの」は侮れない
もしも新車から選択するのであれば、ドンズバな選択肢は「オデッセイ」だ。2013年に発売された5代目の全高は1695mm~1725mmとかつてのような“低車高”ではない。しかし、走りの次元は他のミニバンとは比較にならないほど高く、峠道を楽しく運転できる性能はしっかり継承されている。スポーティ仕様の「アブソルート」も健在だし、かつてのモデルに比べて居住性が上がり、スライドドア付きで乗り降りがしやすくなったのも朗報といえるだろう。またモーター走行を中心とするハイブリッドも用意しているから、新時代のミニバンともいえる。
最後に番外編をお届けしよう。ミニバンではないが、「3列シート」という括りであれば走りを語れるモデルとして入ってくるのはEV専門の新興メーカー「テスラ」。SUVの「モデルX」だけでなくセダンタイプの「モデルS」や「モデル3」にも3列シートモデルが設定されており、強烈な加速を味わえるとともに多人数乗車に対応できるのだ。好事家なら選んでみる価値はある。