旧車を維持するための意外な重要ポイント
旧車を維持するとき、意外と苦労するパーツがタイヤだったりする。サイズがない場合も多くて、360ccの軽自動車に使われる小径だけでなく、スーパーカー系も大変だ。たとえばカウンタックの14インチの「70偏平205」サイズなんて普通には手に入らない。ただ、純正サイズにこだわらなければなんとかなるし、スーパーカー用は少量生産のメーカーがあったりして、価格は高いもののなんとかなるのが実際だ。
タイヤまで当時の雰囲気にこだわりたい
そこまで特殊でなければ、現行タイヤのラインアップから対応サイズを選び、それを履けばとりあえずは維持できる。しかし多くの旧車オーナーとしては、一般的な現行タイヤは受け入れられないだろう。「そこまでこだわらない」というのであればもちろん構わないが、「オリジナル性」や当時の「雰囲気」を大切にするとなると、サイドに「ECO」と書いてあったりするだけで旧車とのマッチングはよろしくない。当時「ECO」は影も形もなかったからだ。
さらに細かいことを言うと1970年代、1980年代あたりのスポーツタイヤのトレッドパターンは今のタイヤにはないもので、サイドも含めて旧車の味わいには重要な要素だったりする。実際、ボディがきれいになっていても足元が最近のタイヤだと興ざめすることもあって、趣味の世界というか単にオーナーのこだわりと言ってしまえばそれまでだが、実際に見てみると納得することは多い。
そもそも今の感覚ではわからないかもしれないが、旧車が現役だった時代には「ダンロップCR88」、通称「パッパー」や「アドバンHFタイプD」「ピレリP7」そして「ポテンザチューン」などタイヤにも流行した銘柄があって、雰囲気を再現したいのは当然だろう。
旧車用タイヤをラインアップするメーカーも
そんな声に応えたのが一部のタイヤメーカーで、日本では横浜ゴムが力を入れている。ターゲットになるハコスカやフェアレディZなどの人気モデルで、先の「アドバンHFタイプD」を創業100周年記念で復刻。
さらに現在ではポルシェ911ターボ用の「A-008P」などもラインアップしている。そのほか比較的新しいモデル向けでは、NA型の初代ロードスターに装着されていた「SF325」をブリヂストンが復刻している。
また海外メーカーはもともと生産していた銘柄を日本でも扱い始めている。たとえばミシュランは1930年代のタイヤも用意されていて、文化の違いを感じるほど。じつはオーダーがまとまれば個別輸入で対応してくれてはいたが、カタログに載っているというのはうれしいところだ。そのほか、ピレリも「P7000」などを作っている。
ちなみに、タイヤがむき出しでクルマ以上に雰囲気が求められるバイクでも同じような旧車用のタイヤが復刻されており、ブリヂストンではBT45からBT46へとモデルチェンジしながら連綿と作り続けられているだけに、クルマより状況は良いかもしれない。
見た目は当時のまま安全性をしっかり確保
旧車向けタイヤで気になるのは性能だが、当然のことながら現在の技術が投入されていて安心感も高い。当時の技術を再現するほうが難しいから当然ともいえ、ただ単にグリップを追求しているのではなく、旧車の足まわりにストレスがかからないよう程良く高性能としている。
この点は旧車向けで重要なところで、最新のタイヤではハブやサスペンション、ステアリング系に負担がかかって不具合が出ることも。見た目は当時の雰囲気ままで、性能をしっかり確保しているのはなんとも魅力的だ。自動車文化の一環として、さらに広がってくれることを期待する。