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「シフト」や「ブレーキ」に比べて甘く見られがちな「アクセルワーク」! じつは「奥が深い」難題だった

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TEXT: 藤田竜太(FUJITA Ryuta)  PHOTO: Auto Messe Web編集部

アクセル全開で走れるのは10%ぐらいしかない

 ドライビングという仕事は、けっきょくのところハンドルさばきと、アクセルとブレーキワークで決まる。ハンドル操作もアクセルもブレーキも奥が深くて難しい。ところが、止まるということと曲がるということには人一倍関心がある人でも、アクセルワークに関しては、わりと簡単に考えている人が多い気がする。サーキット走行の運転動作は街中と変わらない「ハンドル・ブレーキ・アクセル」の3つ

 しかし、本当にタイムアップにつながるのはアクセルワークで、サーキットで好タイムを出すためには、アクセルの全開率を上げるしかない。そのためには、他人より早くコーナーの出口でアクセルを踏みだし、一度アクセルを踏みはじめたら戻さずに、一方的に踏み足して全開まで持って行く。こうしたアクセルワークが理想的だ。筑波サーキットの第2ヘアピンに向かうレクサスLC500

 これはけっこう繊細なコントロールが必要な技なのだが、なかにはアクセルペダルをスイッチのように操作して、オン・オフを繰り返すのがアクセルワークと勘違いしている人も……。

 じつはサーキットでも全開・全負荷で走れるのは10%ぐらいしかなく、あとはほとんどパーシャールスロットルというデータもある。全開時以外のアクセルコントロールこそ差がつくところ。マツダRX-8のアクセルを全開に踏むイメージ

 プロはアクセルのオンオフによる荷重変動を嫌うので、ターンインが終わり、右足がブレーキからアクセルに移ったら、ペダルの動きを止めることはあっても、基本的に戻すことはない。早くアクセルを踏みたいが、踏みすぎて戻すのはNGとしている。メルセデス・ベンツSLSで最終コーナーを攻め込む

 例えば、コーナリング中のアンダーステアが出るギリギリの状態、つまりタイヤの横方向のグリップ力を最大限使っているときに、アクセルをスッと戻すと、クルマは一気にインを向く。場合によってはスピンモードになるほどだ。このようにコーナリングの限界に近ければ近いほど、アクセルによる挙動への影響は大きくなるので、不安定なアクセルワークではどうしても速さにはつながらない。最終コーナーを駆け抜けるマツダ・ロードスターRF

 また、高回転で回しているエンジンは、空気の流れも非常に速い。例えば、6000回転で回っている2リッターのエンジンには、毎秒100リットルの空気が吸い込まれている。空気にも重量があり、慣性がつくので、一度流れた空気をスロットルを戻すことで止めて、もう一度アクセルを踏み直しても、流速を取り戻すには時間がかかる。つまり、アクセルを踏んだり戻したりすると、思ったよりも加速ラグは大きくなる。タコメーターが6000回転を示すイメージ

 さらに加速から減速に移るときも、アクセルからブレーキからに素早く踏み換えた方がいい場合もあれば、ゆっくり踏み換えた方がいい場合もあり、ここでもセンスとスキルが要求される。

 というわけで、余計な荷重変動を極力減らし、トータルでの全開率を高めるアクセルワークは、なかなかマスターできるものではない。ドライビングスクールなどに行って、プロの同乗走行を体験したり、データロガーを見比べて、上手なアクセルワークを研究してみよう。

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  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • モータリング ライター。現在の愛車:日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)。物心が付いたときからクルマ好き。小・中学生時代はラジコンに夢中になり、大学3年生から自動車専門誌の編集部に出入りして、そのまま編集部に就職。20代半ばで、編集部を“卒業”し、モータリング ライターとして独立。90年代は積極的にレースに参戦し、入賞経験多数。特技は、少林寺拳法。
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