ボルクレーシングは2021年も挑戦の手を緩めない
日本を代表するホイールメーカー『レイズ』のフラッグシップブランド、ボルクレーシング。数々のレースで培った経験、技術を存分に生かして、全て自社で完成させるメイド・イン・ジャパンのホイールは、海外でも高い支持を受ける。進化を止めないボルクレーシングが、2021年に試みる新たな挑戦について話を聞く。
TE37の正統的後継モデルSAGAは次のステップへ
ボルクの代名詞的存在なのが、TE37。スポーツホイールと言えば、まずこのデザインを思い浮かべる人も多くいるだろう。シンプルで骨太な6本スポーク。規格外の軽さと高剛性、高い性能を誇る機能美は、国内外の多くの車種の足元を飾った。
「TE37を出したのが1996年。この20数年の間にクルマがどんどん変わって、タイヤも変わった。当時のタイヤはトレッド幅が235だったのに、クルマがワイドボディ化して、気付けば285や295。昨今では335もいけるね、なんて話にもなっている。馬力もどんどんあがって、重量も増加しています。日本だけじゃなく国外に目を向けると、Cセグメントといわれる非常に過激な“黒船”も来襲しそうだということを、世界のモーターショーやエキシビジョンを見る度に強く感じていたワケですね」。
そう語るのはボルクレーシングの“ブランドマスター”を務める山口サン。ボルクレーシングの企画、開発に携わるキーマンであり、レースホイール部門の責任者も兼ねる。
「ブランドマスターの仕事としては、単にホイールの企画云々ではなく、このホイールはどういう風に進んでいくべきか、という道筋を与えてあげないといけないと思うんです。でないとみんなの夢を壊してしまうことになる」。
そこでTE37は、TE37SAGA(サーガ)へと進化を遂げる道を選ぶ。今から5年前の話だ。伝統の6本スポークは継承し、本質は変えず、更なる性能向上を目指してリモデルした。
「TE37のオリジナルモデルに関しては、1ミリも1グラムも強度基準の不安はなかった。でもさらに鍛え上げておこうと思ったのが一つ。もっと持耐久力を高めて、剛性性能を上げる。能力向上を図ろうと。それに加えて、スタイリングも現代のクルマに合うように磨き上げようと。金型から全部変えて、TE37をフルモデルチェンジした。それがSAGAなんです」。
「よく“キープコンセプト”って言うじゃないですか。人気のあるモデルを大幅変更するのって、すごく勇気がいるんですよ。20年間、皆さんから支持をいただいている商品を変える。当時も『何でそんなことするの?』って声は凄くあった。でも、クルマの性能はどんどん上がって、ハイパワーでポテンシャルが高くなっていっている。それをホイール屋として看過しておくわけにはいきませんよね」。
現状を、そして更なる未来も見据え、TE37を超えるスポーツホイール「SAGA」を生み出したのだ。
「どんどんパワーアップしているとはいえ、このまま2リッターのCセグメントが1000馬力までいくワケはないんです。この先にある物は電気ユニット、モーターユニットの搭載。そう運命づけられているんですね。2016年にSAGAを出した当時の車輌総重量が1.45トンあたりだったのが、今では1.6キロ近くまで増えて来ていて、果ては1.7トンなんていうクルマがCセグメントの主流になるかもしれない。更には4WD化が伴うことによって、重量配分、フロントとリアの重さのバランスが顕著に違ってくる。ならば、よりキャパシティを高めたSAGAを作る必要がある」。
そして2021年1月、SAGAはアップデートして「TE37 SAGA S-plus」となった。オリジナルモデルでも十分だった性能を、より高い次元で実現するためのマイナーチェンジである。
「意匠、正面から見た姿は変えていません。これはもう不文律として、性能向上のために最低限必要な所を変えるだけで、スタイルを変えずにTE37はやり続けているんです」。
今回もスポーク裏の肉抜き形状が少し変わっているのだが、それ以外はほぼ見た目の変更はナシ。リムにS-PLUSと刻印が入ったぐらいである。だからパッと見では気付かない人も多いだろう。だが、性能面では大幅に向上している。解析数値で強度は約15%、剛性は7%アップしている。
「5年という年月と、これからBRZや86の新型モデルが出てくることもあって、マイナーチェンジをするなら今だ、とジャッジをした。準備はずっと続けてきていたんです。別にそこまで馬力のあるクルマには乗らないっていう人たちにとっても、持耐久力、高剛性っていうのはあって困るものではない。剛性数値が上がっているということは、乗り心地へもいい影響を及ぼすし、正しく使っていただくと性能の良さは凄く明確にわかってもらえると思うんです」。
かつて鍛造ホイールは、一部の限られたクルマ好きがサーキットを走るために購入するアイテムだった。それが今、初めて愛車を購入した若者も手に取るようになっている。ここまでの道のりの中で、ボルクレーシングが果たしてきた役割は非常に大きく、TE37はそのストーリーの中ではシンボル的な存在である。
「日本って自動車でも何でも新しい物をどんどん出す傾向があるけど、欧州のメーカー、たとえばポルシェなんかでもずっとスタイルとしきたりを守って作っていくんですよね。だから80歳のおじいちゃんが最新式の911を見ても『あ、これポルシェだね』とすぐにわかる。TE37 SAGAの在り方も、それと一緒なんです」。
「Gシリーズ」には新色をプラス
TE37 SAGA S-plusは、先代から変わらずブロンズとダイアモンドダークガンメタの2色設定。その一方で、デザインのトレンドを積極的に取り入れて進化をさせているのが「Gシリーズ」である。
「Gシリーズはデザインは変える。じゃあ何が変わらないかといったら、性能です。高い性能はずっと保っていこうと。どんなデザインにしたとしても、ボルクレーシングの名が付いている以上、性能は絶対に保障するよっていう。色ひとつとっても、クルマとのコーディネイトって、かつてのシルバーと濃いガンメタさえあればいいっていう時代とは全く変わってきていますからね」。
ボルクレーシングは近年、塗装技術の向上にも力を入れている。自社で塗装も行っている強みを生かし、幾度もの調色を重ねて最先端のカラーを見つけ出す。2021年の新色はGT090やG025で初採用した「シャイニングブラックメタル」。輝きと落ち着きを併せ持った超高輝度シルバーである。
「塗装をしていない状態のアルミホイールは息を呑むような美しさではあるんだけど、経年劣化が激しい。でも金属調のシルバーを塗装で再現するのは難しいんです。そんな中で、こんな色が出来た、あんな色が出来たとやっていくうちに、辿り着いたのがコレ。ベースカラーに黒を塗って、その上から特殊溶剤で塗装し、さらにハイメタリックシルバーをその上から噴く。そうすることによって、ベースの黒がハイメタリックシルバーから透けて見えるんです。だから暗い所で見ると真っ黒に、明るい所で見るとシルバーが勝つ。言葉にすると簡単そうですが、大量生産を考えると非常にコントロール性がいる、難しい塗装です」。
またG025では2020年限定カラーとしてダークブルーをリリースしたのに続き、2021年の限定色はボルドレッドクリアに決定。
「赤、時々黒、時にはワインレッドにも見える、そんなレッド。赤すぎるとガキっぽいし、ボルドーを強くすると小豆色になる。そのバランスを見極めて、一番格好いいと思える赤を探しました」。
対応車種を広げるべくサイズも追加設定
2021年からはG025に18インチを追加。21インチで展開していたGT090には20インチも追加し、対応車種の幅を広げる。
高い性能に満足せず、常に技術を追求する姿勢をやめない。「最新のポルシェが最良のポルシェ」とよく言われるが、それと同様に、「最新のボルクが最良のボルク」で在り続ける。
頂点で慢心しない。まだその先があることを、ボルクレーシングは知っている。
NEWレヴォーグやGRヤリスなどに装着したボルク2021年モデルの画像一覧はコチラ
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RAYS
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https://www.rayswheels.co.jp/products/brand_detail.php?lang=ja&brand=VOLK
製造元:RAYS ENGINEERING