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「200万円台」の中身じゃない! カミソリハンドリングで恐れられた「インテR」が笑えるほど高性能だった

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TEXT: 山崎真一(YAMAZAKI Shinichi)  PHOTO: Honda

メーカー謹製のレーシングスポーツであった「タイプR」を身近に!

「もっと身近なタイプRが欲しい」

 1992年のNSXタイプR登場以降、マーケットで高まる要望に応えて、1995年8月に3代目インテグラのマイナーチェンジと同時にリリースされたのがインテグラタイプR(3ドア・DC2/4ドア・DB8)だ。1995年8月24日に発表されたインテグラ・タイプRのフロントビュー

高性能エンジンの代名詞であるVTECユニットをさらにファインチューン

 既存車種だったのでゼロからの開発ではなかったが、ボディ各所に最適な板厚増しやパフォーマンスロッドを追加して補強するとともに、エアコンやオーディオ、リアワイパーレスのみならず、薄厚フロントウィンドウ、防音材の廃止、バッテリーの小型化といった多岐におよぶ軽量化をおこない、ベースの「SiR」に対して40kgのダイエットに成功。またサスペンションはブッシュ類を含めて専用のハードタイプに変更。ギアレシオは2~5速までクロスレシオ化。コーナリングマシンとしての資質を高めた。1995年8月24日に発表されたインテグラ・タイプRの走行シーン

 レーシングマシンに近いハンドリング性能を持たせるとともに、高性能エンジンの代名詞であったVTECエンジン(B18C型)をさらにファインチューニング。自然吸気エンジンのパフォーマンスアップの基本に順じ、専用ハイコンプピストンによる圧縮比アップ(10.6→11.1)をし、クランクやコンロッドも強化。フリクションロスを低減するとともに吸排気系の損失低減を行うため、最適化された専用のエキマニ、インマニを装着。さらにインマニには熟練の職人の手で研磨加工が施された(初期型のみ)。インテグラタイプRに搭載された「B18C・96SPEC.R」エンジン  その他、スロットルバルブ径拡大、カムプロフィールの変更点は60点以上と、メーカーが作る量産エンジンとしては異例といえるほどコストがかかっている。

本格的なメーカーチューンドカーが200万円代で手に入ることで爆発ヒット

 結果、自然吸気エンジンながら、排気量を変えることなく20馬力(200馬力/18.5キロ)も高めるなど、メーカーの本気を感じさせるチューンドカーに仕上がった。1996年9月19日に発表、安全装備を充実したインテグラ・タイプR

 しかも、これだけの内容を盛り込みながら価格は222.8万円(3ドア)と、若者でも手に入れられる価格に抑えられたこともあり、当時ミニバンやRVの人気が高まり、スポーツモデルの低迷が叫ばれていた中でも、スポーツユーザーから支持され、大ヒットとなった。またインテグラのブレイクにより、リクライニング式ながらサポート性の高い赤のレカロシート、チタン製のシフトノブ、赤いエンブレムは、その後のタイプRのアイデンティティとして定着してくことになる。1995年8月24日に発表されたインテグラ・タイプRのインテリア

 ただ、タイプRの登場で「タイプR以外はインテグラにあらず」の傾向が強まり、スペシャリティカーであるベースモデルの販売が低迷することに……。この流れがインテグラシリーズの寿命を縮めることとなったのはなんとも皮肉な話である。

 ここで一つ疑問がある。量産型タイプRはなぜ、ホンダのスポーツモデルの代名詞であるシビックではなくインテグラに設定されたのだろうか? 

B16A型VTEC、B18C型「96spec」、最強のスポーツエンジンを次々と搭載

 これはあくまでも想像の域を超えないのだが、1980年代から2000年頃のホンダのスペシャリティ路線のクルマには先進機構を積極的に盛り込もうとしたのではないだろうか? しかも、しっかりと役割分担があり、上級のプレリュードはABSや4WS、さらにはATTS(左右駆動輪分配システム)などの革新的なメカニズムが投入され、インテグラは最新のスポーツエンジンを搭載する流れだったと思う。プレリュードXXのフロントビュー

 こう書くと「タイプRのB18C以外は2代目に搭載された1989年のB16A型VTECエンジンしかないじゃないか?」との声が届きそうだが、じつは1984年にシビック/CR-Xに採用された名機ZC型ツインカムエンジンは当初クイント・インテグラ用(初代)として開発されており、レースホモロゲーションの関係で前倒しでシビックに搭載されたそうだ。シビックに搭載されたZC型ツインカムエンジン

 もちろん、支流であるインテグラで磨き上げ、熟成した上で本流のシビックに搭載する意味合いもあったのではないだろうか。

「98spec」で完成度を高め、FF車最速モデルとして人気は不動のものになる

 話を戻すと、初代タイプRの人気を得たのは、圧倒的なパフォーマンスもさることながら、専用のB18C型エンジンには「96spec」のサブネームが付けられているとおり、のちにバージョンアップモデルが登場するのが謳われていたこともある。そしてデビューから2年半後に進化した「98spec」が登場する。 ブレーキ径の拡大、4in1のステンレス製マニホールド、タイヤの大径&ワイド化、ボディの剛性アップなど「96spec」で指摘された部分を徹底的に見直し、洗練されたモデルへと磨き上げられたことで、速さと人気は不動のものとなっていく。

 1999年末には最後のマイナーチェンジとなる「00spec」がデビュー。インテグラタイプRの「00spec」 平成10年の「アイドリング規制」に対応するもので、性能面の改良は施されなかったが、オーディオや電動格納ミラー、キーレスエントリーなどの装備を組み込んだ豪華仕様の「タイプR・X」が追加。特化型のピュアスポーツだけではなく、幅広いユーザーを取り込むためのモデルも加わった。インテグラタイプR・Xのコックピットまわり

 FF車最速モデルとして、スポーツカー乗りから高い評価を受けたインテグラタイプRは2001年7月にベースとなるインテグラのフルモデルチェンジにともない、2代目へと進化。2代目インテグラタイプRのフロントビュー

 プレリュードの生産中止にともない、ホンダのスペシャリティカーを一手に引き受けることとなり、ボディサイズが3ナンバーとなり、4ドアセダンは廃止された。2代目インテグラタイプRのリアビュー

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