F1用のV10エンジンをミッドに搭載
164は前輪駆動車のため、本来ならエンジンはフロントに横置きされるのだが、164プロカーでは、最高出力600馬力以上を発生する、バンク角72°のV10エンジン「V1035」をミッドに縦置き搭載していた。実はこのエンジン、アルファロメオの次世代F1エンジンとして、プロカー構想前の1985年頃から開発が始まっていた。
1986年にアルファロメオと契約したF1チームのリジェのマシンにも、ゆくゆくは積まれるはずだったのだろう。しかし、1987年、アルファロメオはリジェとの契約を突然破棄してしまったことで、V1035エンジンもお蔵入りとなってしまった。
そのため、1987年になってアルファロメオにもたらされたプロカー選手権の話は、同社には朗報だったに違いない。164プロカーに、このエンジンが流用されたのは当然ともいえた。
ブラバムが手がけたシャーシに載ったV1035エンジンは、ヒューランド製の6速ミッションを介して後輪を駆動した。ラジエターはフロントに置く。セダンにはおよそ似合わないほどに太いスリックタイヤ、プッシュロッド式のサスペンション、カーボン製ディスクを備えたブレーキも完全にレーシングカーのそれだったが、オーバーフェンダーを持たない164の車体内に収めるため、トレッドがとても狭いのが特徴だった。
こうして完成した164プロカーは、テストで最高速度340km/h、0-400mを9.7秒という、フォーミュラカー顔負けの数値を残した。1988年9月には、モンツァサーキットでリカルド・パトレーゼのドライブで公開テストも行われており、その際も驚異的なパフォーマンスを見せつけている。