7代目フェアレディZ登場以前に探る歴代最高のパフォーマンスモデル
2021年中にフルモデルチェンジが予定され、7代目に移行するフェアレディZ。4代目のZ32型以来のターボモデル(VR30DDTT)が復活し、400馬力を超える歴代最高のパフォーマンスモデルになることはほぼ間違いなし。日産から久しぶりに登場する新型スポーツカーにマーケットは今から期待に溢れている。
GT-R不在の期間を支えるため、パフォーマンスアップに力が注がれた!
日産を代表するスポーツモデルの50年以上におよぶ歴史の中で、オーナー、ファンが輝いていたと認識しているのは初代のS30型と4代目のZ32型だと思うが、パフォーマンスという部分で見れば、最も力が入っていたのは5代目のZ33型だろう。
その理由は簡単。Z33型が販売されていた2002年~2007年は日産のトップスポーツモデルであるGT-Rが不在の期間。日産のスポーツカー市場とモータースポーツをフェアレディZが支えていたのだから、当然メーカーとしても力を注ぐというわけだ。
5年の間にベースモデルも改良が繰り返され、スーパーGT参戦ベースモデルの「typeE」や日産のモータースポーツ活動を支えるNISMOの名が付けられた「バージョンNISMO」などさまざまなパフォーマンスモデルをリリース。リアルスポーツへと進化するモデルライフの中で最強の誉れ高いモデルが、2007年6月に300台限定で発売された「バージョンNISMO type 380RS(以下380RS)」だ。
スーパー耐久レースを制覇するために開発された専用エンジンを搭載
最強と言われる所以はレース参戦モデルとしてプライベーター向けに2625万円で販売されていた「バージョンNISMO type380RSコンペティション(長い!)」のストリートバージョンとして仕立てている点だ。 量産モデルとして販売されるバージョンNISMOとの違いはスーパー耐久レースのトップカテゴリーであったST1クラス(当時)を制覇するために開発されたレース専用エンジン(実際に2007年シーズンはシリーズ優勝を達成)を公道用にディチューンして搭載していること。
具体的には市販車のVQ35HRエンジンをベースに、型鍛造∔フレットロール加工で仕上げられたクランクシャフト、強化クランク、鍛造ピストンなどレース向けに専用開発されたパーツを組み込み、3.5Lから歴代最大排気量となる3.8Lまでストロークアップ。
主要パーツの見直しにより、カムシャフトのプロフィール、バルブのリフト量、バルブスプリング、バルブスプリングリテーナー、そしてECUに至るまで出力向上に対応すべく一新。その結果、出力はスタンダードの313馬力/36.5kg‐mから信頼耐久性の確保、環境性能をクリアしながら350馬力/40.5kg‐mまで引き上げられている(レース仕様は400馬力/43.0kg‐m以上)。
調律された気持ちいいエンジンフィーリングが380RSの魅力
また、各部のクリアランスもレース使用を前提として丁寧に組み上げられ、ノーマルのVQ35HRエンジンよりもアイドリングは静かで、サウンドもジェントル。ただ、ひとたびアクセルを踏み込めば、タコメーターの針はそれにシンクロし、高回転までよどみなく吹き上がる。300ccの排気量アップにより、低速トルクはさらに余裕があり、回せば調律された気持ちのいいエンジンフィーリングが味わえるのが380RSの一番の魅力といえる。
スーパーGTのノウハウが生かされて開発されたエアロパーツやフロントエンド、ルーフ、リアタワーバー付近に補強が加えられて剛性アップを果たしたボディに、専用チューンが施された足まわり、仕様が見直されたブレンボブレーキなどエンジン以外の部分はバージョンNISMOからの変更はない。 これはNISMO仕様の開発段階から3.8Lエンジンの搭載を想定したセットアップが盛り込まれているためで、スタンダードのバージョンNISMOならばエンジンに対して、シャシーはかなりオーバーキャパシティな性能となっている。