「止める」結び方
「デート中にシャツのボタンが取れかかっているのを見た彼女が、バッグから裁縫セットを取り出して縫ってくれたのがプロポーズのきっかけでした」なんて実際にあるような、ないような話を耳にすることがありますが、いつもバッグの中に裁縫セットを用意している女性は相当ポイントが高いと思います。針に糸を通して、糸の端を指先でクルリと「玉結び」にする手際のよさを見たら惚れ直すのも当然でしょう。
ロープの端にひとつコブを結ぶだけなので誰でも日常的に無意識でやっている結びです。「止め結び」ができても誰も惚れてはくれませんが、ロープが手から逃げない、ジャージやフードの紐穴のストッパー役、自在金具や滑車などからのロープの抜け止め、ロープのほつれ止めなど結構役に立つ結びです。
「止め結び」もきつく結ぶとほどきにくくなるので、状況に応じて「固め止め結び」や「8の字結び」を使ってみるのもいいでしょう。コブが大きくなる分、ストッパー役として重宝します。
ロープの両端のほつれを止めるには「端止め」をする必要があります。化学繊維のロープなら切り口をライターの火で溶かして固めます。ゴム系のボンドで固めてしまったり、ビニールテープを巻くのも手軽な方法です。
太いロープや自然繊維のロープの場合は、タコ糸などを巻き付ける「からみ止め」が効果的です。 これは釣り針にテグスを結ぶときの「外がけ結び」と同じ結び方ですが、登山用のロープみたいに本格的なカッコいい「端止め」になります。
「ロープワーク」などというと専門的な技法みたいで敷居の高さを感じますが、いつもやっている靴ひもを結ぶことや、ジャージのヒモの抜け止めのコブ作りなども「ロープワーク」のひとつだったのかと思うと、気軽にマスターできそうな気になりませんか? 次回は「ロープをモノに結ぶ」場面で活躍する代表的な「結び」をご紹介したいと思います。
ILLUST:阿部忠雄