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「跳ね馬」じゃない「フェラーリ」! わずか152台のディーノ206GTという「美しすぎる」芸術

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: Ferrari、原田 了

スーパーカーブームの花形「206・246GT」へとつながる「プロトタイプ」

 プロトタイプと聞いて何をイメージしますか? モータースポーツファンなら60年代のグループ6=プロトタイプや80年代のグループC=スポーツプロトタイプなどをイメージする人が多いでしょうか。クルマファンなら完成して販売されるクルマに繋がる試作車を思い浮かべるかもしれません。

 実際に英和辞書で調べるとプロトタイプ(Prototype)とは試作車、とされています。またこれは少数派かもしれませんが、小説ファンなら梶山季之の『黒の試走車』(光文社発行)をイメージする方も。このように人それぞれのイメージがあるプロトタイプですが、このシリーズでも様々な意味合いのプロトタイプが登場します。第1弾は、スモール・フェラーリとしてフェラーリに新しい流れを生みだした「ディーノ206GT」のプロトタイプを紹介していきます。フェラーリ・ディーノ206GTのフロントマスク

●フェラーリ・ディーノ206GT

 スポーツカーの代名詞とされるブランドの一つがフェラーリです。アルファ・ロメオのワークスチームを率いてグランプリレースで活躍していたスクーデリア・フェラーリを源流とし、戦後に立ち上がった若いメーカーですが、1950年に始まったF1世界選手権(F1GP)の、シルバーストーンで開催された最初のレースからフル参戦を続けてきたことから、今ではF1ファンやクルマ好きでなくとも良く知られた存在となってきました。

 そんなフェラーリは1947年、自らの名を冠したレーシングスポーツカー、1.5LのV12エンジンをフロントに載せた「ティーポ125」を初めて生産していますが、以来、V12エンジンに拘り続けていました。レースではレギュレーションを分析して有利になるよう、エンジンの排気量やシリンダー配置を見直したこともありましたが、ロードゴーイングの市販モデルでは12気筒エンジンを搭載し続けていました。ティーポ125

 しかしその一方で、販売台数を伸ばすためにはV12を搭載せず、比較的安価なモデルも必要との思惑も社内にはあり、1959年にはフェラーリとして初となる4気筒で排気量も1L以下のエンジンを搭載する「ティーポ854」を試作しています。最初はフェラーリではなくフェラリーナ(フェラーリの妹)と名付けられましたが、創業社長であるエンツォ・フェラーリは「12気筒エンジン以外のストラダーレ(=ストリート仕様、つまりは市販モデル)はフェラーリとは呼ばない」と公言していたとも伝えられ、結局それはフェラーリを名乗ることなく、エンツォの友人が経営する化学メーカー内に本拠を構える自動車製造合資会社(Autocostruzioni Società per Azioni)の頭文字から「ASA1000GT」と名付けられて世に出ることになりました。ASA1000GTエンブレム

 その後もフェラーリではロードゴーイングの市販モデルにはV12エンジンを搭載したモデルが続々登場していましたが、スモール・フェラーリを求める声には根強いものがありました。そして、思わぬことがきっかけとなり、V6のスモール・フェラーリが実現することになったのです。それは当時、2L以下のプロトタイプクラスで活躍していた「ディーノ206S」とも「フェラーリ ディーノ206S」とも呼ばれたグループ6(Gr.6)カーが一つの起源になりました。

 そしてもう一つはF2エンジン。CSIのホモロゲーションを受けるために2LのV6エンジンを既定の台数(連続した12か月間に500台以上)だけ生産する必要があり、フェラーリはフィアットとジョイント。フィアットではディーノのモデル名で2ドア3座(2+1)オープンの2ドア4座クーペをリリース。一方のフェラーリがリリースしたのが今回の主人公、ディーノ206GTでした。ディーノ206GT

 ちなみに、一連のモデルに共通するキーワードの“ディーノ”ですが、フェラーリのエンジン技術者にしてエンツォの長男、そして24歳で夭逝したアルフレード・フェラーリの愛称“ディーノ”に因んだもので、事実、“ディーノ”が病床の時に生まれたアイデアをもとに開発された2LV6エンジンは通称“ディーノV6”と呼ばれています。

 そしてホモロゲーションが下りた後は、生産コストを引き下げる目的で“ディーノV6”エンジンも排気量を2.4Lに引き上げると同時にシリンダーブロックがアルミから鋳鉄に変更。ディーノ206もアルミパネルからスチールパネルに変更されています。ボディ重量は200kg近く重くなってしまいましたが、排気量をアップしたことで最高出力と最大トルクが180馬力/19.0kgmから195馬力/23.0kgmへと引き上げられ、結果的にパフォーマンスもアップしていました。フェラーリのディーノV6エンジン

 そんなディーノ206GTの登場を控えて、いくつかのプロトタイプ(試作車)が登場しています。次回はル・マンのサーキット博物館に展示されている1965年式のFerrari Dino Prototype 206 GT Pininfarinaと、その完成形たるディーノ206GT、さらにはその発展モデル等々を紹介することにしましょう。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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